日本で初の女性首相が誕生して2カ月半が過ぎた。世論調査では若い世代を中心に高い支持率をキープしている。
高市早苗氏は保守の中でも最右派を自認する。その思想や言動から、首相就任に複雑な思いを抱く女性は少なくない。「女性が首相になったこと自体は歓迎できる。でも喜べない…」といったように。
そうした「モヤモヤ」が女性同士や男女間の分断を招きかねないとの指摘がある。高市政権の何を評価し、評価しないかで対立が起きやすくなっているというのだ。
政治の世界でようやく実現した「女性初」。どう向き合うかは、社会の在り方を問うことでもある。
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〈高市さん、ガラスの天井をひとつ破りましたね。対極の私からも祝意をお伝えします〉
自民党総裁に高市氏が選ばれた日、立憲民主党の辻元清美参院議員がX(旧ツイッター)に投稿したメッセージが反響を呼んだ。2人は20代からの付き合い。国会議員の在職年数はともに25年以上になる。
「思想信条は違うけど、女性が長く議員を続ける苦しさは同じ。その意味で連帯感はあるし、よう頑張ったなとも思う」。大阪府内の事務所で辻元氏は語った。「ただ、ここからは女も男も関係ない。あの投稿はいわば挑戦状。後半部分こそ読んでほしい」
Xはこう続く。〈たとえ意見や考え方が違っても、すべての人の幸福のために力を尽くす、その思いでしっかり熟議しましょう〉
■「ガラスの崖」に立つ
高市氏は女性の進出を阻む「ガラスの天井」を破った。同時に「ガラスの崖」に立ったとも言える。組織が窮地に陥ったときに刷新感を出そうと女性がトップに担がれやすくなることを指す。少数与党に転落した自民党の危機感の表れでもある。
「男性的な価値観を身に付けないと男社会では上に行けない。その典型例だと思う」。兵庫県内で貧困女性の支援などに長年携わる団体の代表は表情を曇らせる。同じような意見を複数から聞いた。
高市氏は安倍晋三元首相の路線継承を唱えている。家父長的な価値観に賛同し、選択的夫婦別姓や同性婚に強固に反対してきた。支援者には男女共同参画の推進政策に対するバックラッシュ(反動)を担った人たちがいる。それらを踏まえれば、ジェンダー平等に向けた取り組みが後退する懸念がある。
共同通信の世論調査などからは、女性は男性と比べて平和志向が強い傾向が見て取れる。高市氏は防衛費の増額前倒しを目指すなど軍備増強に前のめりだ。多くの女性が拒否感を持っても不思議ではない。
モヤモヤを抱く女性に話を聞いて見えてきたのは「首相は自分たちの代弁者ではない」という失望感である。一方、男性からは「女性の社会進出を望みながら、なぜ高市氏の首相就任を喜ばないのか」といった声が上がる。
■過渡期ゆえに揺れる
首相が女性である点に私たちの意識が向きがちなのは、国政の場で依然女性が圧倒的な少数派にとどまっているからだろう。国会議員の女性比率は衆議院15・5%、参議院は29・8%。女性議員が当たり前の存在になれば、性別ではなく政策や主張にもっと焦点が当たるはずだ。
過渡期ゆえのモヤモヤに向き合いつつ、具体的な政策論に目を向ける必要がある。高市氏に問われるのは、首相として何をするか。それは歴代首相と何ら変わらない。
若者からは男女を問わず高市氏への期待が伝わってくる。甲南大3年の男性(20)は「停滞する政治を高市さんなら変えてくれそう」と話す。資料の束を抱えて国会審議に臨む首相の姿に、自分もリーダーを目指そうと思った女子学生もいる。
「視覚的なインパクトの大きさも好感されている」とジェンダー論が専門の関めぐみ甲南大准教授は見る。学生たちには、交流サイト(SNS)などで個性の強い政治家がもてはやされる風潮に流されず、自分自身の問題意識と政党や政治家個人の主張を照らし合わせるよう呼びかける。「政治は生活と地続きであると気づいてほしい」と語る。
世界で今、保守派のリーダーが分断をあおる状況が見られる。国内の不満を外国人に向けさせようとする為政者もいる。人口減少で日本社会が縮む中、限られたパイを巡る対立は激しさを増すだろう。亀裂を招かないためにも、政治を見る目を鍛えることが重要になる。























