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 またしても「政治とカネ」を巡る不祥事が明るみに出た。東京地検特捜部は公設秘書の給与を国からだまし取ったとする詐欺容疑で、石井章参院議員=日本維新の会を除名=の関係先を家宅捜索した。実態解明へ徹底した捜査を求めたい。

 石井氏は2016年参院選で当時のおおさか維新の会から比例代表に立候補し初当選、22年に再選した。関係者によると、公設秘書としての勤務実態がない人物を雇用しているように偽り、約800万円を不正に受給した疑いが持たれている。事実なら、国民に対する背信行為だ。石井氏は参院議長に辞職願を出し許可された。記者会見や国会で説明を尽くし、けじめをつけねばならない。

 国会法は議員1人当たり3人の公設秘書を認めている。国家公務員特別職として、給与が年齢や勤続年数に応じて税金で賄われている。

 秘書給与を巡っては、1990年代後半から2000年代前半にかけて、与野党の国会議員による詐取事件が相次いだ。給与を議員事務所の口座に振り込ませて議員が流用する手口などが横行したほか、給与を議員側に寄付させ、経費に回す運用も問題視された。

 一連の事態を受け、04年に秘書給与法が改正された。「不正の温床」とされた秘書の兼業が原則禁止となり、秘書本人への給与全額の直接支給や、秘書に対する寄付要求の禁止も盛り込まれた。

 しかし昨年8月には、公設秘書給与など約350万円を国から詐取した罪で、自民党に所属していた広瀬めぐみ元参院議員が在宅起訴され、その後有罪が確定した。公設第1秘書の妻を第2秘書として採用したとする虚偽の内容を届け出た上、給与を事務所の運営費などに充てていたとされる。

 こうした不正は今も政界全体にまん延しているのではないかとの疑念を抱かせる。給与を巡っては、秘書が受け取った後で議員に渡す抜け道があると以前から指摘されてきた。原則禁止とする秘書の兼職も、国会議員が認め、議長に届け出れば許可される例外規定がある。

 例外をなくし、秘書の勤務実態を第三者がチェックする仕組みの導入など、国会は再発防止に向け抜本的な見直しに取り組まねばならない。

 「政治とカネ」の問題では、自民党派閥の裏金事件の全容解明も不十分なままだ。萩生田光一衆院議員の政策秘書が8月、政治資金規正法違反罪で東京簡裁から罰金30万円などの略式命令を受けた。

 裏金事件は衆院選や参院選などでの与党大敗の要因でもある。このままの幕引きはあり得ない。政治不信の払拭へ、自民は再調査すべきだ。