この8月、九州北部などで記録的な大雨が相次ぎ、河川氾濫や家屋などの浸水被害が多発した。熊本県では避難中の車が土砂崩れに巻き込まれたり、車ごと用水路に転落したりして多くの命が失われた。
地球温暖化の影響もあり、「これまでに経験したことのない」レベルの雨が、毎年のように全国のどこかで降っている。兵庫でも過去に大規模な水害や土砂災害が発生しており、気を緩めることはできない。
きょうは「防災の日」。地震以上に身近な脅威となっているのが水害だ。豪雨の常態化を前提に被害を減らす対策を考え、過去の経験にとらわれずに避難などの行動に移せるよう、足元を固め直す日としたい。
九州北部では、低気圧や停滞した前線の影響で大気の状態が非常に不安定になった。積乱雲を次々と発生させ、局地的に猛烈な雨を降らせ続ける線状降水帯が頻発し、熊本県など各地で「観測史上最大」の雨量を更新した。福岡、長崎、大分、山口の各県でも線状降水帯が発生し、被害は広範囲に及んだ。
冠水や浸水が相次ぎ、道路の寸断で孤立する地域も出た。雨水の量が排水処理の能力を上回り、下水道などからあふれ出る「内水氾濫」が起きた可能性も指摘されている。お盆時期と重なり、新幹線が運休するなど帰省ラッシュにも影響した。
土砂災害や浸水が想定される危険な箇所など、どんなリスクがある地域に暮らしているのか、教訓を行動に生かせるよう、一人一人がハザードマップで確認してほしい。自治体も啓発を強化するべきだ。
命を守る最も有効な方法は、安全な場所へ迅速に避難することだ。
危険度が最も高い「緊急安全確保」や避難指示などが出された際、どこにどう逃げるのか、事前に考えておくことが大切だ。激しい雨が降り続ける中では避難をためらいがちになる。特に高齢者や障害者は自治体が避難所を開設した時点で行動に移せるよう、支援が欠かせない。
夜間や浸水被害が発生した段階では身動きが取りづらい。今回の熊本県への大雨特別警報も真夜中すぎの発表だった。明るいうちに早めに動く予防的避難の重要性を再認識する必要がある。避難所への移動が困難な場合、建物の2階以上への「垂直避難」も奨励されている。貴重品や衣類、薬など非常時に持ち出すものはまとめておこう。
台風の襲来など雨の多い季節はなお続く。今回は被害が出なかった地域も対策の再点検や見直しを進めてほしい。行政任せにせず、地域や住民も学びや訓練を重ねる。何より命を守ることを最優先に、備えのレベルを上げていきたい。