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 男性の育児休業取得率が初めて4割を超えた。厚生労働省の2024年度雇用均等基本調査で分かった。前年度比約10ポイント増の40・5%となったが、8割を超える女性の育休取得率には遠く及ばない。男女ともに仕事と子育てを両立できる職場環境づくりを加速させたい。

 10年前は2%程度だった男性の育休取得率は近年、急速に上昇している。これを後押しするのが、22年10月から導入された「産後パパ育休」である。子どもが1歳になるまで取得する育休とは別に、子どもの出生後8週間以内に計4週間の休みが取れる。2回に分けての取得も可能で、育休を取った男性の60・6%が利用した。

 また、21年の制度改正で、対象者への周知や育休取得の意向確認が企業に義務づけられ、23年には従業員千人超の大企業に育休取得状況の公表が求められるようになった。今年4月からは収入減の不安解消へ、育休中の給付が拡充された。こうした制度も有効活用したい。

 政府は、男性の育休取得率を「25年までに50%、30年に85%」とする目標を掲げる。ただ達成に向け課題も多い。若年層を対象にした厚労省の意識調査では育休取得の意向を示す男性社会人の7割が「1カ月以上」を望んだが、23年度の実績では、取得した人の6割が「1カ月未満」だった。希望と現実のギャップを埋める対策が急がれる。

 中小企業への波及も大きな課題だ。100人以上の事業所での取得率は5割を超すが、30人未満は25%にとどまる。金融・保険が6割を超す一方、生活関連サービス・娯楽や不動産・物品賃貸は2割を切るなど業種によるばらつきもある。

 取得をためらう男性は「上司や同僚の負担が増える」などを理由に挙げる。人員不足の中、職場へのしわ寄せを気にする現状を映すが、企業によっては業務をカバーする同僚らに手当を支給する例もある。政府は人手や資金に余裕がない事業者への支援策も強化してほしい。

 育児や家事の負担が女性に偏ったままでは少子化は加速するばかりだ。多様な働き方を広げ社会の意識を変えるためにも、男性の育休取得の促進へ危機感を持って取り組む必要がある。