もうすぐ学校の2学期が始まる。長期の休み明けは、子どもの自傷行為や自殺が増える傾向がある。生活サイクルや言動などに普段と変わったところがないか、周囲の大人が目を配ることが大切だ。
食事の量が減った、朝なかなか起きてこない、「消えたい」などネガティブなことを言う-。こうした異変は子どもがつらさを抱えているサインかもしれない。もし気になる点があれば、「元気がないようだけど大丈夫?」などと声をかけ、気にかけていることを伝えたい。
対応に戸惑う大人は多いだろう。自殺防止に取り組むNPO法人は、相手を正そうとせず口を挟まないでじっくり聴く、「大変な中でよく頑張ってきたね」と温かくねぎらうことなどをアドバイスしている。
だが、家族となると冷静な対応が難しい場合もある。「まもろうよこころ」でネット検索すると、厚生労働省のホームページが表示される。交流サイト(SNS)や電話での相談窓口を多数紹介している。子ども向けの窓口もある。悩んでいる本人や、家族や友人を支えたいと思っている人に活用してほしい。
家族で抱え込まず、専門家に支援を求めることも重要だ。リストカットや薬物依存といった深刻なケースはなおさらである。学校のスクールカウンセラーや養護教諭が相談に乗っている。友人の異変に気づいた高校生が養護教諭に打ち明けて専門機関につながった例もある。
厚労省によると、2024年に自ら命を絶った小中高校生は過去最多の529人に上った。10代の死因で自殺が1位なのは先進7カ国(G7)では日本だけだ。極めて深刻な事態であり、国は対策の実効性を高めねばならない。
今年6月、子どもの自殺対策に社会全体で取り組むと明記した改正自殺対策基本法が成立した。デジタル技術を防止策に活用するほか、学校で心の健康を保つための保健指導に努めるなどとしている。子どもがイライラを自分で軽減したり、信頼できる人にSOSを発したりできるよう取り組んでもらいたい。
国連児童基金(ユニセフ)は5月に先進・新興国43カ国に住む子どもの幸福度調査の結果を公表した。日本の子どもは「身体的な健康度」が首位だったが、「精神的な健康度」は自殺率が上がったために32位と低迷した。分析した日本の専門家は「親の経済状況による学力格差が拡大し、厳しい状況に置かれた子どもが増えている」と指摘する。
さまざまな困難を抱える子どもやその保護者へのきめ細かな支援が求められる。危機意識を社会で共有することが自殺予防の第一歩となる。