マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が急増している。国立健康危機管理研究機構によると、今年の累計患者数は8月17日時点で143人に上り、過去最多だった一昨年の134人を既に上回った。患者の大半が高齢者で、致死率は10~30%とされる。国は対策を強化すべきだ。
SFTSは2011年に中国で初めて報告され、日本では13年に見つかった。西日本が中心だったが、近年は関東でも増えている。今年の累計患者は高知県の14人が最多で、兵庫県も過去最多の8人を数える。
原因となるウイルスを持つマダニに刺されてから6日~2週間程度で発熱や吐き気、下痢などを発症し、重い場合は呼吸不全などを起こして死に至る。有効なワクチンや治療法はなく、対症療法が中心となる。マダニに直接刺されなくても、感染したペットの犬やネコを介してうつる場合があるので留意したい。
予防の第一は、刺されないようにすることだ。
マダニは山中のやぶのほか、都市部の畑や庭にも生息域を広げている。春から秋にかけて活動を活発にするとされるが、兵庫県南部の低山では冬場にも多く確認されており、油断はできない。
長袖と長ズボン、足を完全に覆う靴、手袋を着用し、肌の露出を避けることが対策となる。木から落ちてくることもあり、首にタオルを巻いたり、帽子をかぶったりする必要もある。市販のダニ用防虫スプレーも一定の効果が見込まれるという。
山野で活動した後は入浴し、脇の下や足の付け根、膝の裏などを入念に確認したい。猛暑が続く今の季節は熱中症のリスクも高まるため、山野に長時間入るのはできるだけ避けるのが望ましい。
マダニは吸血前の体長が3~8ミリ、吸血後は1~2センチになる大型のダニで、人や動物に取り付いて数日~10日以上かけて血を吸う。刺された場合、自身で取り除こうとすると口の部分が残って化膿(かのう)したり、体液が逆流したりする恐れがある。そのまま速やかに皮膚科などの医療機関を受診することが重要だ。
山野に入った後、2週間以内に発熱や発疹が出た時もすぐに受診し、医師に行動を伝える必要がある。
マダニが媒介する感染症では日本紅斑熱も知られ、今年の兵庫県内の累計患者数は10人に上る。2~8日の潜伏期間の後、高熱、発疹などが出現する。重症化や死亡の例もあるため、十分注意してほしい。
温暖化の影響もあり、マダニは身近で危険な存在になっている。防虫対策や病気のリスクを知り、しっかり身を守りたい。