お盆休みの最中の13日、大阪・関西万博を開催中の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)が一時孤立する事態に陥った。会場への唯一の鉄道である大阪メトロ中央線が停電でストップし、約3万8千人が足止めされたのだ。全線の運転再開は翌朝となり約1万1千人が会場で夜を明かした。救急搬送者も数多く出た。
日本国際博覧会協会(万博協会)は、今後は交通機関が止まった際は災害対策本部を設け、場内アナウンスや非常食の提供法などを改善する方針だ。会期は残り2カ月を切り、台風シーズンも迎える。非常時の対応を再点検してもらいたい。
この日、中央線は午後9時半ごろに止まったが、40分ほどで一部区間の運転を再開し、接続する地下鉄も終夜運転を決めた。ところが万博協会がこの情報を来場者に伝えたのは約3時間後だった。一部施設やパビリオンは開放したが、午前4時まで飲料水も配られなかった。
石毛総長は運転再開情報の公表遅れを「混雑を避けるため」と釈明したが、来場者への配慮に著しく欠けていた。
協会の防災実施計画には地震や津波などへの備えを示す一方、鉄道トラブルへの対応は盛り込んでいなかった。しかし輸送力の大部分を中央線に頼る夢洲では、電車が止まれば多くの来場者が帰宅困難になると当初から指摘されていた。協会のリスク想定が甘かったと言わざるを得ない。
協会は、今後は交通機関が止まった際に会場内に滞在できる施設を確保し、車で迎えに来てもらえるようにもする。来場者には高齢者や子ども連れ、外国人、車いす利用などさまざまな立場の人がいる。それぞれの目線に立ち、安全や安心を確保しなければならない。
平時でも、万博会場では交通アクセスに関する情報発信の乏しさを痛感する。帰りのバスや電車の混み具合はゲートを出ないと分からず、常に長蛇の行列となっている。
非常時に的確な情報を伝えるためにも、詳しい混雑状況などを平時からリアルタイムで発信し、来場者が適切な交通手段を選べる仕組みを整えてはどうか。混雑が緩和され、満足度の向上にもつながるはずだ。