今回、私に麻痺(まひ)が出なかったのは、出血した箇所が良かったというのもあると思いますが、早い段階で適切な処置をしてもらえたことが最大の要因だと思います。脳卒中の場合、とにかく早く、病院の然(しか)るべき場所にたどり着くことが何より大切なのだと改めて実感しました。
「都市部では、救急車を呼んだとしても受け入れ拒否される場合もありますが、豊岡病院は絶対に受け入れます」という担当の先生のお言葉もとても頼もしかったです。
公立豊岡病院は24時間・365日、救急患者を受け入れていますが、脳神経外科も救急科と連携して同様に対応できる体制をとっています。このような体制は但馬では豊岡病院だけだそうです。病院に行かないに越したことはないですが、ドクターヘリの出動件数も運航開始以後、日本一を維持されていますし、万が一の時には安心して任せられますね。
そして入院中、私が日々感動したのは、当たり前と言えばそうなんですが但馬弁を話される方が多かったこと。東京で入院していた時とは、だいぶ印象が違います。標準語は感情を抜いた言葉なのでどうしても冷たく感じてしまいますが、但馬弁は柔らかくて温かい。頭痛でのたうち回っていたとき、隣のベッドにいた80代のご婦人がわざわざ枕元に来て「えらいな~ぁ」と声をかけて下さいました。あまりの痛みに気持ちで負けそうになっていた私にはキラキラ輝く女神さまに思えて、勇気をもらい、痛みに耐えることができました。
看護師さんたちも優しく相手に寄り添って自分事のように考えてくださる方が多く、本当に有難(ありがた)かったです。回診の時、白衣の医師を前にすると、なぜか余計な緊張が走り、上手(うま)く受け答え出来ないことがあったのですが、看護師さんに不安や疑問を相談するとこちらの意図を理解して、きちんと伝えて下さるので、先生とも落ち着いて話せるようになりました。
「脳卒中は怖い病気で、発症したら終わり」と思い込まされているところがあるかもしれませんが、そんなこともありません。早い段階で処置できれば十分、社会復帰できる病気です。人それぞれに異なる症状や麻痺の出方に惑わされず、発症してからなるべく短い時間で病院にたどり着くことが大切です。それを踏まえても移住して心から良かったと思います。但馬には公立豊岡病院がある。これは本当に心強いですね。