日本バンタム級王座戦を闘い終え、堤聖也(右)と抱き合う穴口一輝=2023年12月26日、有明アリーナ
日本バンタム級王座戦を闘い終え、堤聖也(右)と抱き合う穴口一輝=2023年12月26日、有明アリーナ

 記憶はあいまいだ。したたる血を気にも留めず、堤聖也は穴口一輝と額をすりあわせて何か言った。「実際に何を言ったかは覚えていなくて」。ただ伝えたかった。「これに勝ったらすごい。お前がチャンピオンだ。本物だから胸を張れよ」。日本バンタム級王座戦。判定は王者堤に下った。

 堤はこの試合が年間最高試合に選ばれた時以外、ほとんど穴口について語ってこなかった。亡きライバルの思いを背負って-。そんな見られ方も本意ではない。試合後は交流サイト(SNS)などで批判も寄せられたが、冷静だった。