明石海峡大橋の橋桁に設けられた本土から淡路島に水を送る送水管=神戸市垂水区東舞子町
明石海峡大橋の橋桁に設けられた本土から淡路島に水を送る送水管=神戸市垂水区東舞子町

 観光開発や企業進出が相次ぐ淡路島で、水の供給が追いつかず、ホテル建設が中断するなどの影響が出ている。新たな大規模開発は難しい状態で、島の水道を管理する淡路広域水道企業団(南あわじ市)は島内3市への供給計画を見直して急場をしのぐ予定だが、根本的な解決に向けた供給の増量には数年かかるとみられる。

 淡路島は河川や降水量が少なく、これまでも水不足に悩まされてきた。1994年には旧南淡町(現南あわじ市)で取水制限が299日間に及んだこともある。

 島内ではダムを多く設ける一方、99年からは明石海峡大橋に取り付けた水道管から「本土導水」を引いて全島で水を確保。現在、兵庫県が管理する神戸市西区の浄水場から供給され、1日当たりで、島内全体の供給量の約3分の1に当たる1万7650立方メートルを賄う。

 島内の上水道は同企業団が管理し、淡路、洲本、南あわじの3市に人口規模などに合った量を配分。各市に設けたダムや浄水場から生活、工業用水を供給している。島では近年、人口減少や水道施設の老朽化が著しく、同企業団は浄水場などを従来の5~6割程度に減らす計画を進めてきた。

 そうした中、淡路市を中心に観光開発が激化。この10年ほどで同市西海岸エリアを中心に飲食店などの複合施設が複数できたほか、大規模な宿泊施設建設も計画され、企業の進出も増えた。人口減で減るとみていた水の使用量も急増した。

 各家庭への給水に問題はないものの「水資源は逼迫(ひっぱく)している」と同企業団。現在は洲本、南あわじ市への本土導水の量を減らし、淡路市に融通しているが、島内全域で見ても大量に水を使う工場や数百室規模のホテル建設は難しいという。実際、同市では花博跡地に計画されるホテルやオフィスの複合施設が開業延期になったほか、工場の新設許可が保留されている。

 今後も観光施設や企業を受け入れるには水の供給量を増やすことが必須だが、島内で独自に水を確保するすべはない。不足分は本土導水に頼るしかないが、同企業団は「観光需要が予測できないため、供給をどう増やすか悩ましい」と説明する。まずは浄水場の統廃合を見直す新たな計画を本年度中にもまとめる予定という。(荻野俊太郎)