「学校以外にも居場所はあるよ」と呼びかける「きらきらぼしプレイス」代表の上田杏子さん=神戸市灘区下河原通3、きらきらぼしプレイス
「学校以外にも居場所はあるよ」と呼びかける「きらきらぼしプレイス」代表の上田杏子さん=神戸市灘区下河原通3、きらきらぼしプレイス

 長い夏休みが終わり、学校が再開する8月下旬から9月上旬は、小中高校生の自殺や不登校が増加する傾向にある。「うまく言葉にできなくても大丈夫。つらいことを誰かに相談してみて」。不登校のきょうだいの育児を通して、地域で子どもや高齢者の「居場所」づくりに取り組む神戸市灘区の心理カウンセラー上田杏子さん(45)は、エールを送る。(久保田麻依子)

 上田さんが代表を務める同区の「きらきらぼしプレイス」は、全国の居場所運営者が共同で呼びかける夏のキャンペーン「#学校ムリでもここあるよ」の参加団体の一つ。住宅を間借りし、茶話会や交流スペースとして地域に開いている。

 きっかけは5、6年ほど前、子どもが学校に行き渋るママ友らの「学校以外に集まれる場が欲しい」という会話からだ。2020年4月から教会を借りて定期的に集まりを開き、23年秋に現在の場所に常設した。

 中2の次女が学校に行けなくなったのは、小2の夏休み明けだった。明確な理由やきっかけはないが、人前で話すことができない「かん黙」の症状が出た。親子で放課後に通学する時期もあったが、拒否感からか、鉛筆を2年間握ることができなかった。

 「きらきらぼし」では週1回、不登校や行き渋りの子が集う時間を設ける。「集団教育やにぎやかな環境になじめない子も、1学期は緊張しながらも頑張れる。でも長期休み明けに無理が重なり、学校に行けなくなってしまうケースは珍しくない」とし、「環境が合えば、その子らしく活動できる場は必ずある」と力を込める。

 子どもの異変や行き渋りは、保護者の戸惑いも大きい。上田さんは、共働き世帯が増え、子どもとの時間が取れない事情を察しつつ「親は子どもを案じて、先回りや口出しをしてしまうが、『行きたくない』気持ちを受け止め、子どもを信じて待ってあげてほしい」とアドバイスする。

 次女は学校に通わないが、建築や心理学などに関心を示す。最近はイベントに足を運び、地域との関わりを持つ。中学の担任も定期的に訪問し、家庭と学校の近況を共有する。

 きらきらぼしは「#学校ムリ-」キャンペーンに数年前から登録。「学校は人生の学びの通過点で、それが全てじゃない。学校が得意な子もいれば、苦手な子もいる。学校以外にも、安全な居場所はあるよ」。上田さんは、しんどさを感じる子どもたちに心を寄せる。

■小中高生の自殺者最多、9月に集中/不登校児童生徒、兵庫は増加傾向

 国の統計によると、2024年の小中高生の自殺者数は529人で、統計開始以来最多となった。月別では9月が最も多く、長期休暇明けに子どもの自殺が増える傾向がある。

 23年度の不登校児童生徒数(小中学生)は、過去最多の約34万6500人。兵庫県は1万5849人で、15年度比で3倍超と右肩上がりが続く。

 「#学校ムリでもここあるよキャンペーン」は19年から、子どもの自死を社会全体で防ぐことを狙いに、全国の居場所運営者などでつくる実行委員会が企画している。今年は8月17日~9月8日の期間中、登録した全国54のフリースクールや児童館、居場所施設などが情報を発信し、学校以外で過ごす場の提供や、相談を受けるなどしている。

 企画の担当者は「『学校に行けない』と感じたとき、不安や恐れが本人も保護者にもある。一人で抱え込まず、気軽に足を運んでほしい」と話す。

 兵庫の登録団体は「きらきらぼしプレイス」の1カ所。同団体TEL080・3869・4262