暴力団追放兵庫県民センターは28日、特定抗争指定暴力団山口組の中核組織「弘道会」の拠点事務所(神戸市中央区)が売却されたと明らかにした。センターは事務所の使用差し止めを巡って組側と訴訟で争っていたが、同日、事務所の売却を前提とした和解が5日に成立したと発表した。
事務所はJR新神戸駅近くにあり、登記簿によると、6日付で神戸市内の不動産会社に売却されていた。
事務所では2019年8月、弘道会組員が銃撃されて重傷を負う事件が発生。危機感を抱いた住民らが県警に相談し、22年10月には暴力団対策法に基づき、周辺住民から委託を受けた同センターが、事務所使用差し止めの仮処分を神戸地裁に申し立てた。
地裁は23年2月に仮処分を決定したが、同センターによると組側が不服とし、本訴訟を起こすように求める「起訴命令」を申し立てた。そのため、同年12月にセンターが提訴。裁判が進む中で、組側が事務所の売却を前提とした和解の意向を示したという。
協議には購入予定者も参加し、土地と建物を暴力団に譲渡しない-などを和解内容に盛り込んだ。同センターの代理人弁護団や県警は売買契約などが適正かも確認したと説明している。
同弁護団は「訴訟で事務所の使用制限はできるが、建物の所有までは制限できない。和解で所有権の喪失につながったことは大きな意義がある」と話した。