もう一度、連載1回目で紹介した数字に戻りたい。
終戦の2年半後、厚生省(当時)が実施した「全国孤児一斉調査」。対象は1~20歳。12万人超とされた戦災孤児には“保護先”の内訳が記されていた。
親戚宅=10万7108人
施設=1万2202人
保護なく独立して生計=4201人
研究書でこれを知ったとき私は思った。「駅の浮浪児に比べれば、親類や里親に引き取られた子は幸せだったのでは」と。「駅の子」を経験した籔内義和さん(89)=神戸市長田区=の体験を聞いていたからだ。
だが、それを真っ向から否定する研究者がいた。
孤児の調査を続ける関西大の土屋敦教授(47)=歴史社会学=だ。