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 神戸新聞の「ファクト検証」情報募集コーナーに、「石破茂首相が『消費減税は金持ちほど恩恵が大きい』と発言した。この見解は正しいのか、チェックしてほしい」という調査依頼が寄せられた。税制度に詳しい関西学院大の上村敏之教授に聞いた。

 石破首相は6月28日、静岡県沼津市での自民党会合で、野党が公約に掲げる消費税減税について次のように述べた。

 「消費税って忘れてはいけません。医療、年金、介護、そういう社会保障の財源なのです。本当に大切な財源なのです。(中略)お金持ちほどたくさん消費しますから、そういう方ほど減税額が大きい。本当にそれでいいんだろうか」

 石破首相は同日、東京・永田町の党全国幹事長会議でも同様の発言をしており、交流サイト(SNS)上で「消費税の逆進性(低所得者ほど負担が重くなる性質)と矛盾する」などと疑問の声が上がった。

■恩恵の大きさは「額面」か「割合」かで異なる

 上村教授は「確かに、所得が多い人は消費額も大きく、額面上は減税による恩恵も大きい。データにも裏付けられており、この点について石破首相の主張は妥当」と説明する。

 一方で、所得に対する消費税の負担割合や、生活への影響を考えると評価は変わる。食費や光熱費など生活必需品の割合が大きい低所得層ほど、消費税の負担が家計に与える影響は重い。

 上村教授は「どちらに恩恵が大きいかは、額なのか割合なのか、比較する基準によって異なる」と指摘。その上で「物価高対策なのか、低所得者支援なのかといった政策目的が混在しがちだが、議論を分けて考える必要がある」と述べる。

■政策目的は?「低所得者支援→給付金」「物価高対策→消費減税」

 参院選では自民・公明両党が1人2万円の給付を掲げる一方、野党各党は消費税減税や廃止を主張する。

 上村教授によると、低所得者対策を目的とするなら、限られた財源で効果的に支援できる給付金の方が効果が高い。その半面、所得再分配策としては効率が悪い。

 反対に物価高対策が主眼なら、消費減税によって家計の可処分所得が増える効果が期待できる。だが、その場合も注意が必要だと上村教授は話す。

 「巨額の財源が必要になり財政赤字が拡大すれば、国債金利の上昇や物価高騰のリスクがある。重要なのは手段ではなく政策目的。減税や給付の是非を判断する際は、その目的を意識して考えてほしい」(参院選取材班)