夫澄彦さんの写真を前にアスベストを題材にした歌を歌う平地千鶴子さん。生前は一緒に音楽を楽しんだという=尼崎市
夫澄彦さんの写真を前にアスベストを題材にした歌を歌う平地千鶴子さん。生前は一緒に音楽を楽しんだという=尼崎市

 尼崎市のクボタ旧神崎工場のアスベスト(石綿)禍から20年。周辺住民の体内で息を潜めていた「死の棘(とげ)」は今も、石綿疾患を突然発症させ、命をむしばむ。

 「悪性胸膜中皮腫」。2021年4月、西中秀夫(70)=尼崎市=は診断を聞いてもピンとこなかった。前年暮れの健康診断に異常はなかった。年が明けると、せきが出始め、春先には階段を上がれなくなった。呼吸困難になり、病院でレントゲン写真を撮ると右肺が真っ白だった。そのまま総合病院に行き、肺にたまった水を抜くなどしていた。