高校生の質問に答えた(右から)中田慎也氏、高橋有子氏ら=伊丹市緑ケ丘7、県立伊丹高校(撮影・吉田敦史)
高校生の質問に答えた(右から)中田慎也氏、高橋有子氏ら=伊丹市緑ケ丘7、県立伊丹高校(撮影・吉田敦史)

 20年ぶりの新人対決が見込まれる兵庫県伊丹市長選(6日告示、13日投開票)を前に、地元の高校生が地域の課題やまちの将来ビジョンについて立候補予定者に問う「市長選ミーティング」が県立伊丹高校(同市緑ケ丘7)であった。清酒を生かした活性化策や公共交通網の在り方、南海トラフ巨大地震に必要な防災対策は何か。生徒5人が率直な質問を投げかけた。(金 旻革)

 神戸新聞社が同校の協力を得て3月28日に開催。参加締め切りまでに立候補を表明したいずれも無所属新人で、市議の高橋有子氏(46)と元県議の中田慎也氏(42)の2人が出席した。

 眞野恵理菜さん(17)は、「清酒発祥の地」をPRする同市などが日本遺産に認定され、清酒が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことに触れ、観光資源としての活用策を尋ねた。

 高橋氏は、酒造りの歴史などを伝える市立伊丹ミュージアムでのガイド付きツアーや、地元飲食店と連携した清酒レシピの作成を提案。「たみまるレモンのような特産物づくりもいいかも」と私案を披露した。

 中田氏は、酒造会社などとの連携強化を主張し「海外を含めた外部への発信を市と企業が理解しないといけない」と、情報発信の重要性を訴えた。地元酒造会社とのネットワークがある自らの強みも強調した。

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 箟柊土郎さん(17)は、市東部と西部で鉄道網や商業施設、住宅開発の「偏在」に着目し、「東西格差にいかに向き合うか」と問いかけた。

 中田氏は、交通の便が良く、地価の高いエリアは鉄道駅周辺が多いとしつつも、「交通網が充実していないということは、伸び伸び暮らしやすい環境があるとも言える。不便は格差なのか議論したい」と語った。

 高橋氏は、駅前の中心市街地を除き、周辺地域で人口減少が顕著と指摘。「大都市への通勤・通学手段の確保は必須。市内を網羅的に走行する市バスの存在意義を再確認し、継続的に運営したい」と述べた。

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 30年以内で80%程度の確率で起こるとされる南海トラフ巨大地震を巡り、吉田香那さん(17)は、防災対策の見通しと公共施設の現状を聞いた。

 高橋氏は、学校などの耐震化は完了済みと説明。避難所運営はプライバシー保護などに課題があり、「女性の視点が重要。市の防災会議で女性の割合は理想の30%に届いていない。比率を高める」と強調した。防災訓練への参加者増加も目指すとした。

 中田氏は「避難所の機能をいくら強化しても、一人一人へのきめ細やかな支援がなければ災害関連死は防げない」と訴えた。介護が必要な市民を避難所に誘導し、避難先で適切な福祉サービスを受けられる態勢が重要と強調。明瞭な情報発信にも意欲を示した。

 市長選を巡っては、学習塾経営者の茶谷英明氏(58)も無所属で立候補すると表明している。