兵庫県の告発文書問題を調べる第三者調査委員会の藤本久俊委員長(左から2人目)から調査報告書を受け取る小畑由起夫県代表監査委員(右)=19日午後、神戸市中央区、兵庫県庁
兵庫県の告発文書問題を調べる第三者調査委員会の藤本久俊委員長(左から2人目)から調査報告書を受け取る小畑由起夫県代表監査委員(右)=19日午後、神戸市中央区、兵庫県庁

 兵庫県の告発文書問題を調べた第三者調査委員会が19日、調査結果を公表した。斎藤元彦知事による職員へのパワハラがあったとし、告発内容を調べずに作成者捜しをしたことなどが公益通報者保護法に照らして「違法」と認定。作成・配布したことを理由に元西播磨県民局長を懲戒処分にしたのは「裁量権を逸脱し、明らかに違法で無効」と県の対応を厳しく批判した。

 県議会調査特別委員会(百条委員会)が4日、県の対応が「同法に違反している可能性がある」との報告書を公表したが、第三者委はこれよりも厳しい判断を示した。

 斎藤知事は19日、取材に応じ「(第三者委の)報告を重く受け止める。内容を精査するのが大事だ」と述べた。一方で、文書の内容を「誹謗中傷性が高い」とした従来の発言について「これまで述べてきた通りだ」との認識を改めて示した。

 第三者委は元裁判官を含む弁護士6人で構成。元県民局長を処分した県の内部調査の客観性を疑問視する声が上がったのを受け、県が設置した。昨年9月から百条委の資料に加え、県職員らへの聞き取り調査などを進めてきた。

 報告書では、告発文書に記された七つの疑惑について事実認定と評価を記載。知事のパワハラ疑惑は、調査対象16項目のうち、「机をたたいて叱責した」などの10項目をパワハラと認定した。これとは別に、記者会見で元県民局長を「公務員失格」「うそ八百」と非難したのもパワハラに該当するとした。

 公益通報制度の観点からも県の対応を検証し、文書は同法で定められた要件を満たし「外部公益通報に該当する」と指摘。疑惑の当事者の斎藤知事らが調査を指示し、処分決定に関与したことは「極めて不当」と強調した。県が元県民局長の公用パソコンを回収したことは「違法な通報者探索行為の一環だった」とし、文書の作成・配布を理由にした懲戒処分は「効力を有しない」と結論付けた。

 第三者委は、パワハラや県の違法な対応の背景にある要因として、斎藤知事や幹部に「他の意見をよく聞き、取り入れる姿勢が乏しかった」などと分析。「パワハラをなくし、公益通報者を保護する体制を築く自浄力が求められる」と総括した。

 また、知事が企業から贈答品を受け取ったとの疑惑は「贈収賄と評価できる事実はなかった」としつつ、「外形的に見て、斎藤知事による贈答品の要望とも受け取りうる発言が複数件見受けられた」と明記。プロ野球阪神・オリックスの優勝パレードを巡る補助金の還流疑惑は「キックバックは認められなかった」とする一方、「疑念を持たれてもやむを得ない状況だった」とした。

(前川茂之、岩崎昂志)

【告発文書問題】兵庫県西播磨県民局長だった男性が2024年3月、斎藤元彦知事のパワハラ疑惑など7項目を挙げた告発文書を作り、関係者らに送付した。4月に県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象外と判断。内部調査で誹謗中傷文書と認定し、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。これに対し調査の中立性を疑う声が出て、県は弁護士でつくる第三者委員会を設置。県議会も6月、調査特別委員会(百条委員会)を設けた。証言する予定だった男性は7月に死亡した。9月、県議会の不信任決議を受けて斎藤知事は失職したが、11月の知事選で再選された。