国土交通省は18日、公示地価(1月1日時点)を発表した。兵庫県は商業地と住宅地ともに全体の平均変動率が3年連続の上昇となった。上昇率トップは、インバウンド(訪日客)に人気の城崎温泉街(豊岡市)。神戸、阪神の都市部も観光客数や商況の回復、再開発への期待などに後押しされ、市場が勢いづいている。
商業地の上昇率は神戸、阪神南で5%を超え、阪神北、東播磨、北播磨、中播磨も伸び率は前年より0・2~0・6ポイント高かった。西播、但馬が下落から上昇に転じ、唯一、下落が続く淡路も下げ幅が縮んだ。
地点ごとの上昇率では、豊岡市城崎町湯島がトップの前年比20・2%アップ。海外からの温泉宿泊客で連日にぎわい、不動産の希少性が増した。最高価格は例年通り、神戸・三宮センター街東側入り口周辺(神戸市中央区三宮町1)の1平方メートル当たり730万円。前年より10%近く上がった。
住宅地も神戸、阪神間は昨年以上に好調で、前年比1・9~3・0%の上昇。中播磨が横ばいから、淡路が下落からそれぞれ上昇に変わった。ただし地方部、都市部問わず、過疎地や高台など利便性の低いエリアは下落が続き、自治体内での二極化が起きている。
市町別の上昇率の上位は神戸市灘区、中央区、明石市。神戸・三宮の再開発や神戸空港の国際チャーター便就航、県内大手企業の本社移転などを控える影響で、需要が高まっている。人流の回復も好材料。県内の最高価格は昨年と同じ芦屋市船戸町で、1平方メートルあたり76万円だった。
県不動産鑑定士協会の梶川智保副会長は「百貨店売り上げや観光客数などの指標が新型コロナウイルス禍前まで回復するなど、経済活動の活性化が商業地の価格上昇の要因」と分析。特に神戸・三宮は期待感が高まっているとしつつ、「金利上昇や物価高による建築費の高騰もあり、プラスとマイナス双方の材料を注視したい」と話す。
工業地は、神戸・阪神間の沿岸部で需要の超過が顕著。物流拠点などの用地が不足し、全ての地点で上昇した。(那谷享平)