泉都(いずみみやこ)さん=当時(75)=は1995年1月の阪神・淡路大震災で亡くなった。自宅は神戸市東灘区森南町にある、築80年近い日本家屋風の木造2階建て。震災前年に80歳の夫をみとり、1人で住んでいた。
あの日、西宮から駆けつけた長男、正三さん(76)らが見たのは、ぺしゃんこになった実家と、そこに覆いかぶさる屋根瓦。「ダメなんやな」と覚悟した。
周囲の住宅も軒並み倒壊している。捜索は生存反応のある現場が優先され、都さんの遺体と対面できたのは地震の2日後。まるで眠っているようだった。「苦しんだ様子はなかった。それだけが救い」。正三さんは言う。