「疎開先に出発したときが、父との最後の別れになった」と語る矢野啓子さん=西宮市(撮影・風斗雅博)
「疎開先に出発したときが、父との最後の別れになった」と語る矢野啓子さん=西宮市(撮影・風斗雅博)

 「思い出したくない」「差別される恐れがある」「もっと大変な目に遭った人がいる」…。さまざまな事情から、自らの被爆体験を語ってこなかった被爆者がいる。広島で被爆した矢野啓子さん(90)=西宮市=もその一人だ。今回取材をお願いすると、しばらく考えた末、応じていただけることになった。矢野さんが見た爆心地の光景や、話さなかった理由とは。(聞き手・勝浦美香)