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 「前立腺肥大症」は、その名の通り、前立腺が大きくなって、尿道を圧迫する病気だ。排尿トラブルが生じ、薬物療法で改善しないときは、前立腺を切除したり、蒸発させたりする手術が中心になる。ただ、高齢者などは、従来の手術が難しいケースが少なくない。2022年、こうした患者を対象に登場したのが「経尿道的水蒸気治療」(WAVE(ウエーブ)治療)だ。水蒸気を使った新たな手術法とは。(竜門和諒)

■卵やミカンほどに

 前立腺は、前立腺液という精液の一部をつくる男性特有の臓器で、膀胱(ぼうこう)の出口で尿道を取り囲む位置にある。元々はクルミぐらいの大きさだが、肥大すると卵やミカンほどになり、尿道を押しつぶして、「トイレが近い」「尿がすぐに出ない」といった残尿感や頻尿、尿漏れなどの症状が現れる。

 厚生労働省の調査によると、前立腺肥大症の国内推計患者数は108万人(20年度)。また、前立腺の肥大は、50歳で3割、70歳では8割、80歳で9割に見られるなど、高齢になるほど多い。原泌尿器科病院(神戸市中央区)副院長の井上貴昭医師は「肥大は40代ごろから始まり、男性ホルモンの影響を長期間受けるのが主な原因」と解説する。

■手術難しい例も