ベルトコンベヤーのカプセルトイを掲げるオークラ輸送機の金川健太朗さん=加古川市野口町古大内
ベルトコンベヤーのカプセルトイを掲げるオークラ輸送機の金川健太朗さん=加古川市野口町古大内

 子どもだけにとどまらず、大人にも人気が広がる「カプセルトイ」。精巧に作られたミニチュアや実用的なポーチなど、つい集めたくなる商品が並ぶ中で、最近、企業とコラボしたカプセルトイが増えている。認知度や親しみやすさのアップを狙い、兵庫県内でも食品メーカーや帽子専門店、一般消費者とつながりが薄い企業間取引(BtoB)が主体の企業も参戦している。(綱嶋葉名)

 机の上に置かれているのは、工場や物流拠点で活躍するベルトコンベヤーのミニチュア。連結部分を回すとベルトも動くクオリティーの高さで、コレクター心が刺激されるかわいさだ。

 手がけているのは、加古川市で創業96年を誇る物流機器・システムメーカー「オークラ輸送機」。EC推進グループ長の金川健太朗さん(40)は「会社の認知度を上げるための挑戦です」とにやり。

 企画の立ち上げは昨年9月ごろ。社内のアイデアコンテストでプラモデルが提案されたことがきっかけだった。「いい案だけど売れるか不安だった」ため、実現しやすそうなカプセルトイに取り組むことにした。

 プロジェクトチームを結成してカプセルトイの企画販売を行う会社「トイズスピリッツ」(東京都)と打ち合わせを重ね、主力商品のベルトコンベヤーをミニチュア化すると決めた。こだわったのは、ベルトの色や質感。トイズ-の担当者が工場を訪れて色味を確認し、実際のベルトを持ち帰って深緑色を再現した。

 8月に発売すると、すぐに売り切れる場所も出るほど反響は大きかった。すでに社内では「アルミやステンレスなど実際に使っている素材を使ってみたい」「ローラーコンベヤーも作りたい」など第2弾の声が上がる。金川さんは「何を作っている会社なのか幅広い人に知ってもらえるので、BtoBの企業にはとてもいいマーケティング。リクルート効果にもつながればうれしい」と期待する。

 2021年から参入しているのは、老舗帽子専門店「マキシン」(神戸市中央区)だ。エレガントなデザインを誇る同社の商品は高価なため「手が届かない」という声もあった。そこで、「究極に安い帽子を」と一つ400円のカプセルトイの販売を始めた。

 現物の帽子を忠実に再現することに注力し、8種類を用意。帽子を入れる箱とマネキンも同封している。手持ちのフィギュアなどにかぶせることもでき、専務取締役の渡邊江美さんは「デザインの良さを知り、親しんでもらうきっかけになってほしい」とほほ笑む。

 「Q・B・Bチーズ」で知られる六甲バター(神戸市中央区)も、ベビーチーズ柄のキーホルダーやロールシールなどを展開。さらに、ふわふわな手触りのマスコットや、同社の「チーズデザート」をデザインしたポーチを販売し、交流サイト(SNS)上でも人気を集めている。

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 カプセルトイの市場規模は拡大の一方だ。日本玩具協会によると、2022年度は610億円で10年前と比べると約2・2倍になった。業界団体の話では、背景の一つがコロナ禍。商業施設や商店街で店舗の閉店や撤退が相次ぎ、空いたスペースを自動販売機「ガチャガチャ」を置くカプセルトイの専門店として活用する例が目立った。

 人件費が削減できる点や、インバウンド(訪日客)の増加も追い風に。出店や店舗拡大が相次ぎ、神戸ハーバーランドの商業施設「umie(ウミエ)」内の専門店は6月、販売機を約200台に拡大。9月には三宮駅前に約620種類のカプセルトイが楽しめる専門店「♯C-pla(シープラ)」が開店した。