透明の納体袋にコロナ患者の遺体を納める看護師ら。「救いたかった」との思いは強い=2020年12月25日夜、神戸市中央区港島南町2、市立医療センター中央市民病院
透明の納体袋にコロナ患者の遺体を納める看護師ら。「救いたかった」との思いは強い=2020年12月25日夜、神戸市中央区港島南町2、市立医療センター中央市民病院

 新型コロナウイルスの感染「第3波」が拡大した2021年1月、神戸市立医療センター中央市民病院はコロナ患者の受け入れを46床までに制限すると宣言した。21年3月以降の「第4波」では、病床の逼迫(ひっぱく)がますます顕著になった。

 入院の必要な患者が自宅で待つ期間が長くなり、重症化してから搬送される。治療で命を取り留めても、人工呼吸器を長期間付け、集中治療が可能な病床を占有する。そのため新規患者の受け入れが難しくなり、待機患者が重症化する-という悪循環に陥っていた。

 副院長で呼吸器内科部長の富井啓介(65)らは、鼻から密度の高い酸素を送り込む「ハイフローセラピー」(HFNC)の適用を広げ、人工呼吸器の割合を減らそうとした。コロナ患者の臨時病棟に酸素の配管を増設して備えたが、重症者の急増には追いつけなかった。

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 中央市民病院のコロナ対策を協議するコアメンバー会議(コア会議)の議事録には、21年4月から5月にかけて緊迫した発言が残る。

 「もう望みのない人には『ダメ』とはっきり言うことも必要ではないか」

 「人工呼吸器を希望していても、回復の見込みが少ない場合は挿管しない対応も必要ではないか」

 議論の中で、根拠となる院内データが示された。