灘のけんか祭りの通称「ひろばたけ」の桟敷席。エビや煮しめのほか、若者向けに揚げ物や肉料理、おにぎりが並ぶ=姫路市白浜町
灘のけんか祭りの通称「ひろばたけ」の桟敷席。エビや煮しめのほか、若者向けに揚げ物や肉料理、おにぎりが並ぶ=姫路市白浜町

 高砂の伊保(いほ)港からは家島諸島の東端に浮かぶ上島が正面に見える。島周辺での漁を終えた船が帰ってきた。伊保漁業協同組合長の高谷繁喜さんが水揚げしたのは旬のアシアカエビだ。「祭りにエビやシャコがないとさみしい。このエビはまだ、たくさんとれる」と顔をほころばせる。播磨各地の秋祭りの食をにぎわしてきた瀬戸内海の幸。海の異変で取れなくなっているが、祭りを彩る料理には欠かせない。自然と人の織りなすテロワールの物語が詰まった兵庫。今回は秋祭りの伝統の味を訪ねたい。(辻本一好)

 名前の通り足が赤い大きなアシアカエビは、しょうゆと好みで砂糖を加えた湯でゆでる。ゆがきたては特においしい。かごにはクルマエビも交じっている。別のかごにはシラサエビ。「湯に通すと皮をむきやすい。氷で冷やして刺し身で食べるとうまい」と高谷さん。まるごと天ぷらにしても最高だ。

■ワタリガニ激減

 ショックだったのはシャコ。5、6センチの大きさしかない。30年余り前、姫路の秋祭りの取材で訪れた各家庭では大皿に大きなシャコが盛られていた。祭りの食の華だったワタリガニも激減している。高谷さんの底引き網には幸運にも大物が1匹入っていた。

 この日は、曽根天満宮(高砂市曽根町)の秋祭りの宵宮の前日。知人に頼まれた魚を配り、ゆでたエビなどは宵宮の休憩時間のごちそうにする。