6日で発生から半年となるトルコ・シリア大地震の被災地に、うちわでメッセージを届けよう-。そんなプロジェクトを、神戸市の非政府組織(NGO)で活動する若者たちが始めた。伝えたい思いを絵や文で表現し、暑さが厳しいトルコの仮設住宅などに届ける。「日本らしいうちわで、ひとときの涼を感じてもらいたい」。遠く離れた日本からつながり続ける。(上田勇紀)
神戸市兵庫区のNGO「CODE(コード)海外災害援助市民センター」。事務所の一角で、スタッフの山村太一さん(22)、いずれも学生スタッフで大阪大4年の島村優希さん(22)、関西学院大4年の植田隆誠さん(23)が段ボールを開けた。
取り出したのは、うちわ300本分の骨組みと白地のシール。「片面を日本で、もう片面をトルコでメッセージを描いてもらって完成させ、被災地に届けたい」と山村さんは話す。
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地震は2月6日に発生。トルコ南部でマグニチュード7を超す地震を2度記録し、高層マンションなど数多くの建物がもろくも崩壊した。1923年のトルコ共和国建国以来最悪の被害を出し、隣国シリアでも多数が死亡。犠牲者は両国で5万7千人以上に上る。
CODEは発生直後、吉椿雅道事務局長(55)と植田さんを現地に約1週間派遣。神戸から持参した防寒着を届け、倒壊したビル横でたき火を囲む遺族や、氷点下のテントで寝泊まりする避難者から話を聞いた。
3月には島村さん、6月には山村さんが吉椿さんに同行。仮設住宅などで女性や子どもを支援する現地NGOの活動に加わった。
その印象として、3人が口をそろえるのは、被災者の優しさだ。家族や自宅を失いながらも「チャイ(紅茶)を飲んでいけ」と気遣ってくれた。「話を聞いて回る私たちを、誰も断らず、受け入れてくれた」と植田さんは振り返る。
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プロジェクトは6月、オンラインでトルコと結んだ会合で、うちわを見たトルコ人学生から「それ、いいね」と声が上がったことがきっかけ。トルコでは珍しいうちわにメッセージを託せば、日本からの贈り物として喜んでもらえると考えた。
7月末には、吉椿さんとつながりのある石川県の子どもたちが約30枚を描いた。今後も兵庫県内で描いてもらう場をつくり、CODEの交流サイト(SNS)で呼びかける。
「日本では関心が薄れているが、自分が描いたメッセージが届けばきっとつながりを実感できる」。3人はそう力を込める。
うちわは9月以降、トルコ渡航に合わせて現地へ運ぶ予定にしている。
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