大型放射光施設「スプリング8」(右下)を中心に広がる播磨科学公園都市=2016年11月
大型放射光施設「スプリング8」(右下)を中心に広がる播磨科学公園都市=2016年11月

 たつの市と佐用町、上郡町にまたがる丘陵地に広がる播磨科学公園都市(通称・テクノ)は、1997年のまちびらきから来年で30年を迎える。大型放射光施設「スプリング8」など最先端科学技術を核とし、産官学住がそろう未来都市として県が造成した。しかし、開発計画面積約2千ヘクタールのうち、半分以上が手付かずのままだ。人口は当初掲げた2万5千人の5%未満。国際的な新都市の実現から遠く、県はまちの将来像を模索し続ける。(西尾和高)

人口わずか1176人 ネット普及、研究者らの定住進まず

 テクノはバブル経済が始まった1986年に着工した。県はスプリング8などの先端技術の研究機関や大学、企業などを集積させ、国内外から多くの研究・技術者が集まることを期待。2012年には、スプリング8の近くにエックス線自由電子レーザー施設「SACLA(さくら)」も稼働した。

 県は3工区に分けて開発する計画だったが、着手できたのは学術研究や産業、住宅用地とする第1工区(約960ヘクタール)のみ。第1工区の人口は5100人と定めたが、昨年10月時点で1176人にとどまる。人口は08年の1687人をピークに減少し、3工区全体で想定した2万5千人を大きく下回る。

 産業用地(83ヘクタール)は全て売却され、製造業を中心に31社が進出した。一方、住宅用地(28ヘクタール)の分譲率は68%に上るが、太陽光発電所になった3カ所を除いた場合、32%と低調だ。当初1800戸の建設を見込んでいたが、現在463戸にとどまるなど住宅用地は現在も売れ残る。第2、3工区(計1050ヘクタール)については未着工で、計画は実質的に凍結している。

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 スプリング8を利用する民間企業が研究施設を建設し、そこで働く研究者らが生活する-。県はそんな青写真を描いた。しかし、バブル経済の崩壊で企業の投資意欲が減退した上、阪神・淡路大震災による県の財政悪化が響き、まちの整備が大きく遅れた。

 情報技術の急速な発展を予測できなかったことも大きかった。県によると、研究者はインターネットを利用することで、海外からでもデータを自由に収集できるようになった。遠隔地の拠点施設との通信網による連携も可能となり、研究施設などの近くに居住する必要がなくなった。

 今年8月でまちびらきから29年となるが、未来都市の実現は極めて困難な状況にある。現在、県は新たなまちのあり方を検討しており、24年には学識者や地元3市町などと協議会を設立した。若者の定住や土地の利用方法などについて議論し、節目の年となる27年度に基本的な方向性をまとめる考えだ。

 県は「人口減など社会情勢の変化で、まちづくり構想を抜本的に見直す必要があるか、住民らの意見を基に考えたい。持続可能な都市運営を目指す」としている。