半田久美子主任研究員
半田久美子主任研究員

 神戸層群の植物化石を整理している。主に神戸市須磨区、北区、西区で採集された葉の化石で、種子や果実の化石もある。加東市や三田市、三木市で採集されたものも含まれている。

 整理の方針は、採集地点ごとに分けてから、植物の種類順に並べることとした。1万点もあるので、地点ごとに分けるだけで時間がかかった。

 まず化石の付いた石に1点ずつ通し番号をつける。写真を撮り、石に記入されている採集地点情報や採集日等を表に入力した。終了したら表を採集地点ごとに並べ替え、それに従って化石を並べ替えた。到底1人ではできず、何人もの方々に担当していただいた。

 次は植物の種類分けだ。1地点の資料が数十点までなら全体を見て分けることができる。ところが300点を超えるものもあったため、広いセミナー室を使うことにした。セミナー「葉の化石を調べよう」として実施し、長机に化石を並べて、参加者とともに化石の仲間分けを進めている。

 観察のポイントは、まずは大きさや形、切れ込みがあるか、葉脈の走り方だ。次にルーペで拡大し、鋸歯(きょし)と呼ばれる葉の縁のギザギザや、葉脈の走り方など細部を検討する。見ていくと現在のケヤキやブナ、クヌギに似た葉が見つかった。特徴的な葉脈をしているのに種類が特定できず困ることも多い。

 困った時に参考にするのは、葉で見分ける図鑑や葉脈標本データベースだ。図鑑は検索部分の写真を眺めて手掛かりをつかむのに使う。より詳細に検討する時に、国立科学博物館の葉脈標本データベースが有用だ。葉脈標本の画像を拡大して葉の縁の鋸歯や、細かい葉脈を比較する。葉の化石同定の参照用を目的に作られており、海外産の植物も含まれている。化石で出てくるが今は日本に分布しないヌマミズキ属や切れ込みのあるコナラ属の葉なども調べられる。

 もちろん現在の葉も参考にする。1本の樹木の葉でも1枚ずつ形が違うので、特徴を細かく調べるほど変異に幅があることが見えてきて、かえって困ることもあった。

 化石を見ていると、当時の落ち葉を現在見られることを奇跡のように感じる。枝に付いたまま化石になった葉は、台風のような暴風で落ちて化石になったのだろうか。植物化石の含まれる白い石は凝灰岩と言い、火山灰でできている。火山灰の生き物への影響はどうだったのだろうか。当時の植生を復元するために、まずは1万点の資料の登録を進めたい。