記録的な猛暑が続くこの夏、三木市吉川町鍛治屋のおしゃれなプールに連日、歓声が響いていた。県道沿いの白壁に囲まれた、バーベキューも楽しめるレンタルスペース。夏休みを満喫する家族連れで予約がいっぱいの遊び場だが、実は老舗左官店の4代目が伝統技術の確かさを知ってもらうために設置した展示場だった。(大山伸一郎)
■白壁に囲まれプール、バーベキュー 京阪神からも予約続々
中国自動車道吉川インターチェンジから約1キロ。「藤Land(ふじランド)」は昨年9月に完成した。作ったのは左官や外構工事を手がける「藤SAKAN」(吉川町渡瀬)。社長で1級左官技能士の藤枝譲(ゆずる)さん(43)は1926年創業の藤枝左官工業を2019年に引き継ぎ、それまで高い技術で下請け仕事を完璧にこなしていた父鉄夫さん(71)の姿を追いながらも、もっと認知度を高めなければ企業としての将来はないと考えていた。
21年に法人化し、23年に造園会社のショールームを見学したのが契機となったという。「職人として、お客さんのニーズを聞く場がなかった。求められるものを知るために挑戦しよう」と決意し、土地を購入して同年末に着工。幅3メートル、長さ7メートルのプールの回りには人工芝やウッド調のタイルデッキ、日よけのカーポート、サンルームをしつらえた。父鉄夫さんが昨夏に仕上げてくれた白壁には、壁画アーティストの描いた花々が彩りを添える。
レンタルスペースは1日1組限定で、この夏休み、地元のほかにも京阪神からの予約で埋まる。必要な機材をそろえたプールサイドでバーベキューが楽しめるほか、24時間ろ過機能を設置したプールは夜間にはライトアップされて幻想的な雰囲気も楽しめる。また、ヨガやハーブ販売など地域イベントも開催。31日にはプールを無料開放し、アイスクリームや韓国料理、ドーナツ、焼き菓子などを販売する夏まつり(午後3~7時)も初めて開く。
代替わりしてからの5年で売上高を倍に伸ばした譲さんは「知ってほしい、という思いだけで挑戦したが、ここまで反響があるとは思わなかった。入り口としてはレジャーで使ってもらって、左官や外構の工事でこんなものが作れるということを吉川で知ってもらえたら、作った意味がある」と手応えを感じている。
4人から利用可能で、バーベキューのみは大人1人3300円から。申し込みはホームページなど。藤SAKANTEL070・3963・8727