舌をぺろりと出すタンタン
舌をぺろりと出すタンタン

 王子動物園(神戸市灘区)の雌のジャイアントパンダ「タンタン」が死んで3日が過ぎても、SNS上には、「神戸のお嬢さま」をしのぶ投稿が続いている。3年にわたる長い闘病中も、多くのファンが獣医師や飼育員とともにタンタンを励ましていた。(井上太郎)

 2021年6月中旬の休園日のこと。ガラス張りの屋内展示場でこちらに背を向け、体重計の縁にどっかり腰を下ろしていた。もともと高山地帯に生息するパンダは暑がりなので、夏場は涼しい朝のうちをのぞいて、冷房が効いた屋内で過ごしているのだと、スタッフが教えてくれた。

 三角形で白黒の後ろ姿は、うわさにたがわず、おにぎりのように見えた。タンタンは短い脚を目いっぱい伸ばし、そのへんに転がった竹を引き寄せてはむしゃむしゃ頰張って、ポイ。ずぼらな感じもまた、人をひきつける魅力の一つ。歳をとるほど磨きがかかっていたのかもしれない。

 前年に中国からの貸与期限が切れ、一度返還が決まっていた。しかし、コロナ禍で四川省への直行便が飛ばずに返還が延び、翌21年4月に園が心臓疾患を公表した。タンタンの取材もこの頃から、帰国のめどや治療の話題が中心になった。