山陽特殊製鋼本社の東側ゲート=13日午後、姫路市飾磨区中島(撮影・船田翔太)
山陽特殊製鋼本社の東側ゲート=13日午後、姫路市飾磨区中島(撮影・船田翔太)

 日本製鉄は13日、完全子会社の山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)を2027年4月1日付で吸収合併すると発表した。山特は同日付で解散する。「戦後最大の倒産」といわれた経営破綻を経て再建した波乱の歴史を持つ山特だが、創業時の「山陽製鋼所」から90年以上続く会社はなくなる。鉄鋼業界は中国との価格競争や内需の低迷で厳しい環境が続き、日鉄は両社の棒線や特殊鋼事業を一体化させて競争力の強化を図る。

 山特は特殊鋼の中でも、自動車部品などに使われる「軸受け鋼」で世界最高の品質を持つとされ、国内業界トップの生産量を誇る。吸収合併について日鉄は「特殊鋼の海外戦略拡大へ相乗効果を高める」としている。

 姫路市にある山特の工場は日鉄の「山陽地区」として存続。近接する日鉄瀬戸内製鉄所広畑地区とともに同社グループの一大拠点を形成する。山特によると、吸収合併に伴う生産拠点の統廃合や雇用の変更は、現時点で予定されていないという。

 山特は1965年に倒産した際に富士製鉄(現日鉄)から支援を受けた縁から、2019年に日鉄の連結子会社になった。25年4月には完全子会社化され、東証プライム市場の上場は廃止となった。

 日鉄は近年、グループ会社の見直しを進め、再編を通じて経営の効率化を図ってきた。日鉄の関西製鉄所大阪地区(大阪市)から、山特に生産を集約する方針も示していた。

 完全子会社化を機に、山特は北欧の特殊鋼子会社を中心としたグローバル展開を図っている。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)に向けた取り組みにも注力しており、日鉄は技術開発を加速させる。

 また、強豪で知られる山特陸上部について、山特総務部は「活動を前提に検討を進める」とした。(末永陽子)

 ■小説「華麗なる一族」の題材に

 山特は1933(昭和8)年、「山陽製鋼所」として姫路で創業した。35年に山陽製鋼として株式会社化し、ベアリングの素材となる「軸受け鋼」の製造を始めた。39年に大阪証券取引所(当時)、54年には東京証券取引所に上場。59年に現社名になった。

 大手鉄鋼メーカーとの競争で大型の設備投資を断行したが65年、東京五輪後の不況で資金繰りが悪化、会社更生法の適用を申請した。負債総額は約500億円。当時、戦後最大の倒産で、山崎豊子さんの小説「華麗なる一族」の題材になったとされる。

 67年に富士製鉄(現日本製鉄)などの資本参加を得て再スタートを切り、73年に会社更生手続きを終えた。

 【山陽特殊製鋼】1933(昭和8)年に姫路市で創業、35年株式会社化。59年から現社名。65年に資金繰りの悪化で会社更生法適用を申請。負債総額約500億円で当時、戦後最大の倒産となり、山崎豊子さんの小説「華麗なる一族」の題材になったとされる。73年に会社更生手続きを終えた。2019年から日本製鉄の連結子会社。25年4月に完全子会社化され、東証プライム市場を上場廃止となった。26年3月期の連結売上高1713億5600万円。25年6月時点の単体従業員数1625人。