2028年の神戸電鉄(神戸市兵庫区)開業100周年に向け、同社の草創期を支えた車両の復元作業が進んでいる。兵庫県内の鉄道愛好家グループが、昭和初期から残る全国でも貴重な存在として保存を働きかけ、インターネットで資金を調達。茶色の輝きを取り戻した4年前に続き、今春、側面などの木製の窓や乗降扉を復元し、96年前の外観がよみがえった。関係者は「100周年には完全な姿に戻したい」と意気込んでいる。(大島光貴)
神鉄が神戸有馬電気鉄道として開業した翌年の1929(昭和4)年に造られた車両「デ101」。71年まで沿線住民らの足として活躍した後、鈴蘭台車庫(同市北区)で検査車両を出し入れするけん引車として2016年まで役目を果たした。老朽化で解体予定だったが、社内外から保存を求める声が上がり、愛好家らが神鉄に協力を申し出た。
愛好家らは18年に「デ101まもり隊」を結成。クラウドファンディング(CF)で資金を集め、神鉄に修繕を託すプロジェクトを始めた。21年に穴が開いていた外装を補修し、製造当時と同じ茶色で全面的に再塗装を実施。23~24年にもCFを行ったほか、追加の寄付も加わり、今年3月に2度目の工事が完了した。
今回は正面と側面の片方ずつを修繕し、けん引車となる際に鉄板で埋められた乗客用の扉を復元。ホームとの隙間を解消するために設けられたステップもよみがえらせた。上から下に開く木製の「落とし窓」や、車両後部を赤い光で示すテールライトも復元した。
「やっと半分。写真でしか見たことのなかった現役時代の姿に、全国の皆さんの力で復元でき感無量」と同隊の事務局代表、米倉裕一郎さん(59)=神戸市兵庫区。今後車両の見学会を開く予定で、「戦争や震災、解体を乗り越えてきた車両。残る部分の復元に向け、さらに動きを進めたい」と話す。