神戸・長田の女性靴製造・販売会社、CELESTE(セレステ)が、甲南大の学生らが企画した靴を商品化し、直営店で販売を始めた。学生らは「若者がターゲットの靴」を提案。互いに意見を交わし、企画立ち消えの危機も乗り越え、約1年半かけて製品化にこぎ着けた。産学連携としては異例の長期の取り組みとなった。(谷口夏乃)
今年3月下旬。神戸・北野にあるセレステの直営店「シューファンタジー」に、甲南大の学生らが集まった。マーケティングなどを学ぶ西村順二教授ゼミのメンバーだ。学生とともに作り上げたローファーとパンプス、カジュアルシューズが店頭に並ぶ。甲南大の横山美咲さん(22)は「全員が最初から最後まで、興味を持って関わることができた」と笑みを浮かべた。
「学生さんのしなやかな感性で考え抜かれた靴ができあがった」と同社の金森正文社長(52)。「でも、何度も心が折れそうになりました」としみじみと話す。
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コラボは2023年春、淡路信用金庫神戸支店(神戸市長田区)の赤穂友治支店長が提案した。同支店は約60年にわたって長田のシューズ産業と付き合いがあった。赤穂さんは西村ゼミの卒業生で、甲南大とセレステに連携を呼びかけた。
セレステは1960年に「マルト製靴」として創業し、23年に現社名に改称した。直営店は北野の本店のほか、全国に9店舗を構える。主な顧客層は30~50代の女性で、若者向け商品の拡充が課題だった。
コラボには西村ゼミの2年生(当時)20人が参加した。学生たちは3グループに分かれ、それぞれどんな靴を作るか検討。実際に履く人や場面を具体的に想定し、ターゲットに合う靴を考える「シーンマーケティング」という手法を基に種類やデザインを考えた。週1回のゼミと長期休暇などの時間を使い、工場やショールームを視察したり、大学生らにヒアリングをしたりして、商品案を練った。