橋の下をくぐって医薬品を運ぶドローン。水面からの高さはわずか1・5メートル=洲本市塩屋(撮影・内田世紀)
橋の下をくぐって医薬品を運ぶドローン。水面からの高さはわずか1・5メートル=洲本市塩屋(撮影・内田世紀)

 衛星利用測位システム(GPS)が届かない橋の下を含む経路で、ドローンを自律飛行させる全国初の実証試験が27日、洲本市であった。河川は、人などの往来がないことから安全対策費を低減でき、ドローン物流のルートとして期待される。ドローンは計画通り、橋をくぐって川を進み、医薬品を目的地まで無事に届けた。(西井由比子)

 試験は、ドローンの社会実装を推進する兵庫県と新産業創造研究機構(NIRO、神戸市中央区)の支援事業に採択され、産業用ドローン開発のプロドローン(名古屋市)と医薬品卸のメディセオ(東京)、兵庫県立淡路医療センター(洲本市)の3者が実施した。

 機体はプロドローンの小型機「PD4S-T」を使用。GPS信号が届かない橋の下でも、水面までの距離を自動測定しながら低高度で飛べる。

 この日の試験でドローンは、洲本市下加茂のメディセオ淡路支店でガラス製の注射剤容器10本が入ったケースを載せ、屋上から洲本川近くの広場まで飛行。再浮上後、川の上を低く飛び、橋を一つくぐって、約2キロ先の県立淡路医療センターまで荷物を届けた。

 強風の中、同センター屋上に着陸すると、待ち構えたメディセオや病院の担当者は、荷物が水にぬれたり、振動で破損したりすることなく運ばれたことを確認した。

 人や鉄道、車などの往来のない河川上のドローン飛行は、交通安全上の調整や監視員の配置が不要。運用コストを低減でき、ドローン物流の可能性を広げられるとして期待されている。

 試験後、プロドローンの市原和雄常務は「(橋をくぐり、荷物を損傷なく運べ)試験は成功した」と評価。「100メートルおきなど狭い間隔で連続する橋をくぐる安定飛行にはまだ課題があるが、2026年までの運用開始を目指したい」とした。

 メディセオの若菜純常務は「(残業規制の強化でドライバーが不足する)物流の2024年問題もある。医薬品は緊急搬送が必要なこともあり、ドローンへの期待は大きい」、淡路医療センターの柴田直子薬剤部長は「災害時も念頭に、物流手段を増やすことは重要」と話した。