王将5連覇を達成して花束を受け取った藤井聡太六冠=3月26日、大阪府高槻市、関西将棋会館
王将5連覇を達成して花束を受け取った藤井聡太六冠=3月26日、大阪府高槻市、関西将棋会館

 将棋の藤井聡太六冠(23)=竜王、名人、王位、棋聖、棋王、王将=が、第75期王将戦7番勝負と第51期棋王戦5番勝負でカド番に追い込まれた後、計5連勝して盛り返し、六冠を堅持した。失冠すれば四冠まで後退しかねないピンチから底力を発揮。いずれもフルセットの戦いを終えた後の会見では「幸運だった」「不思議な気持ち」と大逆転劇を振り返った。(小林伸哉)

 1月開幕の王将戦7番勝負で挑戦したのは、研究パートナーの永瀬拓矢九段(33)。タイトル戦番勝負での対決は7期目で、初の打倒藤井へ燃えていた。

 藤井は2月18日、王将戦の第4局を終えて「1勝3敗」と崖っぷちに立たされた。並行する棋王戦5番勝負でも3月1日、挑戦者の増田康宏八段(28)に「1勝2敗」とされ、失冠の危機を迎えた。3月5日には第11期叡王戦本戦準決勝で永瀬に敗れてしまう。

 「苦しさを感じる時期」で「自分自身への期待というか、自信というものが下がってしまっていた。どういう気持ちで対局に臨むか、難しさを感じることもあった」という。「防衛を目指すというよりは、目の前の一局を頑張って、結果としてシリーズを長く続けられたら」と考えていた。

    ■    □

 大一番となった王将戦の第5局(3月8、9日)で、後手番の藤井は角交換を拒否し、相掛かりの力戦を志向した。「途中は苦しい将棋だった」が、終盤、自陣に飛車を打つ妙防手などで逆転勝ちした。

 この戦いから「徐々に好転した」といい、4勝3敗で王将5連覇を果たした。将棋史上、タイトル戦7番勝負で、1勝3敗のカド番から3連勝する逆転で制覇した例は、今回の藤井で4人目、5回目となる(このほか、0勝3敗から4連勝した例が2回ある)。

 ファンの記憶に残る偉業だが、藤井は「防衛となると結構厳しいのかな、と感じていたので、どちらかといえば、不思議な気持ちというのが、今の実感に一番近いかな」と語った。

 善戦した挑戦者について、藤井は「後手番のとき、作戦はいろいろ考えましたけど、的確に対応されてしまうことが多く、永瀬九段の力を感じました。こちらが先手番のときも、角換わりの中でいろいろ工夫の手を指されて、勉強になることが多かった」と述べた。

    ■    □

 棋王戦は、第4局までずっと後手番が勝ち続ける珍しい戦績で、3月29日の第5局を迎えた。後手番の増田は「一手損角換わり」と工夫した作戦で臨んだが、藤井が勝利。3勝2敗で棋王4連覇を果たした。永世棋王(連続5期)の資格獲得にあと1期と迫った。

 藤井は「今期全体として増田八段に主導権を握られ、けっこう辛抱する展開が多かった」。両棋戦について「最終局はどちらも(振り駒で)先手番になって幸運だった」とし、「追い込まれて開き直って指すことができた」「この経験を今後の糧にできるところもあると思う」と語った。