作品に込めた思いを語るやなぎみわ=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館(撮影・大田将之)
作品に込めた思いを語るやなぎみわ=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館(撮影・大田将之)

■神話、時代に応じ書き換え

 写真作品シリーズ「女神と男神が桃の木の下で別れる」の桃の実は、今にも枝から落ちてしまいそうに熟れて、暗闇の中で輝くように浮遊する。神戸市出身の現代美術作家で舞台演出家のやなぎみわは「古事記」に出てくる生と死の境目の桃をモチーフにした。

 展示室中央には、桃をつかむ三つの腕の造形作品「Juggling with Peaches(ジャグリング ウィズ ピーチズ)1、2、3」も。隣接のスペースでは、能を映像インスタレーションにした「排斥と遊戯 ~黄泉平坂(よもつひらさか)~」を上映している。

 「流動と定着のどちらも作品として大切にしてきた」とやなぎ。今展では「定着」が写真と造形で、映像は「流動」というわけだ。阪神・淡路大震災から30年という「テーマが難しいと思った」が、「この二つを展示の柱として、30年間で考え、やってきたことを見せる」ことにした。