■ふにゃふにゃ柔軟に見て
作品の意図は時として、作家本人が思う方向から離れていくことがある。
美術家・束芋(たばいも)が手がけ、原美術館ARC(群馬県)にある「真夜中の海」(2006年制作)は、真っ暗な部屋で、映写機から波の中を女性の長い黒髪が漂う映像が流れ、両端に置かれた鏡によって四方八方に伸びていく。女性の長い髪はあの有名ホラー映画を想起させ、波と連動するアニメーション自体の美しさと、そして少しのおかしみがあいまった、不思議なインスタレーションだ。
この作品について、東日本大震災後、会場に入る前に作品を解説、津波を思い起こさせる可能性があることを鑑賞者に告げる措置が取られた。