淡路島には医学生時代一度訪れたことがある。春休みだったか、同級生のN君と旅に出た途次寄ったのだ。
浜辺が今よりもっと広かった記憶がある。馬を引いた博労(ばくろう)が何人かいた。京都大学に入学して間もなく、百万遍を濶歩(かっぽ)している角帽姿の馬上の一群に瞠目(どうもく)、馬術部の学生と知って自分も入りたいと思ったほどだから、博労に呼びかけられるまでもなくすぐに馬に跨(またが)った。君もどうだ、と誘ったが、馬がかわいそうだから僕はやめておく、と言うN君を尻目に、洲本城趾まで馬の背に揺られて上った。
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