芸人をやっている。仕事にロケというものがある。おいしいお店や行楽スポットを紹介する。いろんな町に出向き、通りすがる人に声をかけ、自由に歩き回ることもある。芸人でなかったら、初対面の方に頻繁に話しかけるなど異常なことのように感じただろう。
元来びびりで人見知りな僕には向かないと思っていたが、やってみると楽しくて仕方がない。知らない職業のことを聞き、想像をはるかに超える人生を歩んだ方の金言のようなせりふをいただける。「頑張りや」と応援してもらい、「これ食べ」と採れたての野菜をもらう。人の優しさをじかに受け取ると、涙が出そうになるほどありがたく感じる年になった。
ロケは何が起こるかわからない緊張と爆発的な笑いを生む可能性を大いに秘めている。カメラが回っている間は「どうにでもなれ」と腹をくくれる。だが、通常の生活に戻ると、なぜかそうもいかない。ご近所さんと話していても、どこか緊張するのだ。差し障りのないやりとりをして、話もそこそこに、あいさつをして終わらせてしまう。びびりと人見知りが、そっとのぞき込んでくるようだ。
先日、有名なホラー映画の人形がプリントされたTシャツを着て、子どもを連れて公園に出かけた。顔をさしたのか、僕を見るなり数人の小学生から、ひそひそと「テレビで見たことある」「芸人や」と聞こえてきた。直接呼ばれたわけではないので、その声には反応しない。それに反応すると、傲慢(ごうまん)な気がするからだ。
しばらくして公園を貫くように「おい! チャッキー!」と僕に向かって大きな声が聞こえた。先ほどの小学生だ。公園中の人が一斉に僕を見るのがわかった。僕は迷いなく聞こえないふりをした。
【やまな・ふみかず】1980年滋賀県生まれ。名古屋外国語大中退。お笑いコンビ「アキナ」でボケ・ネタ作り担当。「せやねん!」など出演番組多数。ウェブ上で短編小説「人間劇場」を連載。























