坂口涼太郎さん
坂口涼太郎さん

 中学生のときに通っていたダンススタジオ「モダンミリイ」の発表会を、兵庫県立芸術文化センターに見に行った。学校終わり、学園都市から石屋川と御影の間にあるスタジオまで毎日通っていた。そこで出会い、私の髪をずっと切ってくれている友人のお子も、いまモダンミリイに通っていて、晴れ姿を見るために駆けつけた。

 まだ歩けるようになって3日ぐらいちゃいますのん?と思うようなお子たちが、ちゃんと振り付けを覚えて妖精のように舞っている。その姿を見て、気がつくと私は社会の中でサバイブするために身につけたあらゆる技や道具を、懺悔(ざんげ)するように劇場の床に放り捨てながら手を合わせていた。

 自分をごきげんにするためにしていたつもりだったのに、いつの間にか他人の目を気にすることに重きを置くようになっていたかもしれない、おメイクを施した私の顔面から六甲の湧き水ぐらい勢いよくクレンジングウオーターが放出され、他人の目とか一切気にしていなかった頃のすっぴんになりながら、舞台の端で踊っている子たちを見ていた。「どうせ見られていないだろう」と思いながら踊っている子は一人もいなかった。

 「スポットライトが当たっていなくても、見てくれている人は絶対にいるよ。誰かのためじゃなくて自分のために踊るんやで。そうしたら、きっとあなただけにスポットライトを当ててくれる人に出会えるからな」。そう心の中で呟(つぶや)いた言葉は、ずっと舞台の端で踊っていた過去の自分に向けて言っているようだった。舞台が終わり「ブラボー!」と大きく発声した声は自分の体にじんじん響いた。

 涼短歌〈センターじゃなくてもきみの振る舞いによってスポットライトは当たる〉

 【さかぐち・りょうたろう】1990年神戸市生まれ。俳優。映画「ちはやふる」シリーズなどで癖の強い「クセメン俳優」が代名詞に。昨年、初のエッセー集「今日も、ちゃ舞台の上でおどる」を出版。