伊藤鐘史(しょうじ)さん (33)
神戸製鋼ラグビー部/神戸市東灘区
伊藤鐘史(しょうじ)さん (33)
神戸製鋼ラグビー部/神戸市東灘区
正直、もう20年か、という感じです。
あの日、神戸の自宅が揺れている間、魂が地面に吸い取られるような感覚でした。住んでいたのは長田区御菅(みすが)地区の市営住宅。建物も家族も無事でしたが、辺りの木造家屋はぺしゃんこ。その後の火事で、道1本隔てた所まですべて焼けてしまいました。
その夜は家族と小学校へ避難しました。グラウンドにとめた車で、同じように避難していた同級生と手をつないで寝たんです。中学生の男2人がですよ。車の天窓から星がよく見えていたのに「お先真っ暗やん」と思ったのを覚えてます。
「地震に強い家をつくろう」と考えて兵庫工高に進学し、出合ったのがラグビーでした。それからは楕円(だえん)球が人生の中心です。京都産業大学、リコーを経て2008年に神鋼へ。進学にしろ、移籍にしろ何かを決断する時、「今を全力で」という思いがあります。そう考えるようになったのは、やっぱりあの地震があったからです。
神鋼の歴史は街の歴史と重なります。今の神戸があるのはみんなが頑張って生きてきたから。この節目の年に日本一を届けられたら。あらためてそう感じています。(中西幸大)
神戸市東灘区御影浜町、神戸製鋼灘浜グラウンド