震える心 力に変えて
助け合いを忘れず、走る

坂本直子さん (33)
アテネ五輪女子マラソン 日本代表/広島県福山市

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震える心 力に変えて
助け合いを忘れず、走る

坂本直子さん (33)
アテネ五輪女子マラソン 日本代表/広島県福山市

 震災に遭ったのは、西宮に住んでいた中学2年生の冬でした。家族も家も無事でしたが、学校は休校し、断水の日々。ペットボトルを手に毎日、給水車の列に並びました。
 「大丈夫? 運ぶの手伝うよ」。よく年上の人に気遣ってもらいました。でも当時は思春期の中学生。すごくうれしかったのに、うまく感謝の気持ちを伝えられませんでした。
 それから9年後、アテネ五輪で夢だったマラソン代表に選ばれました。所属チームの天満屋の監督、先輩の山口衛里さん(シドニー五輪代表)、仲間や家族のおかげです。心からそう思えたのは、震災の時、見知らぬ人同士が助け合ったことを「いいな」と感じた、あの体験があったからです。
 五輪では30キロ手前で先頭のスパートを追えず、7位に終わりました。メダルで感謝を伝えようと思っていたから悔しかった。県立西宮高校時代も含め、お世話になった人の顔が次々と浮かびました。
 それでも気持ちを切り替えて五輪後も競技を続けられたのは、いろんな人の支えがあったから。昨年春に結婚して引退し、広島に移り住みましたが、第二の人生も人とのつながりを大切にして走るつもりです。(宮路博志)


2014年8月26日掲載
写真撮影場所:

西宮市、武庫川河川敷