震災からわずか二カ月後の都市計画決定から、十七日で丸三年。復興土地区画整理事業が進む神戸市東灘区の森南地区(一六・七ヘクタール)は、住民側の反発が強く、市との協議方針をめぐり、まちづくり協議会が三分裂するなど苦難の歩みを重ねてきた。唯一着工した森南町一丁目(森南第一地区)のまちづくり協議会が、計画決定三年を区切りに、行政との交渉過程や住民集会でのやり取りなど、まちづくりの歩みをまとめた記録集づくりを進めている。発行は四月ごろの予定。(長沼隆之記者)
一丁目では今月十二日、移転を伴わない現地換地分だが、初の仮換地指定が対象の住民に通知された。
協議会の独立後、一丁目では事業は確かに進んだ。しかし、協議会の分裂は、それぞれの住民の心に大きくのしかかる。
「今でもこの町に区画整理の網をかけたのは間違いだと思っている」
区画整理審議会委員でもある「森南町一丁目まちづくり協議会」相談役の加賀幸夫さん(64)は話す。
「急いで協議を進めても一年以上かかった。合意を待てずに土地を売却、転出した人も多い。こうした犠牲者をこれ以上出したくない。生活再建のために、事業は時間との闘いだ」
協議会の役員は独立後の昨年春ごろ、三年を区切りに行政との交渉過程や役員会の論議、協議会が分裂に至った過程を記録に残そうと作業を始めた。
編集委員を務める同協議会副会長、東海林順也さん(53)は「行政と同じ土俵で話をさせてほしい、と言い続けてきた。区画整理で街が今よりもよくなる、そう思えるまでの苦悩は相当なものだった」と振り返る。
記録集は、独立後の協議会の歩みを中心に、住民集会や役員会の議事録をもとに、やりとりをできるだけリアルに再現、年表や新聞記事も収録する。
東海林さんは「役員会での突っ込んだやりとりの様子などから、住民合意の難しさや行政との交渉の厳しさが伝わると思う。他地域の参考になれば」と話している。記録集は住民や関係者に配るほか、希望者へ配布も検討している。
森南地区では、三丁目と本山中町一丁目からなる「第二地区」が二十日に着工する。三年前の十七メートル道路計画が変更されないまま残る二丁目は、合意へ向け協議会と神戸市との協議が続く。
1998/3/17