結婚7年目を迎えた30代のAさんは、自分たち夫婦はそれなりにうまくやっていると思っていました。ところがある夜、リビングに置かれた夫のスマートフォンの画面が明るくなり、そこには「新着メッセージがあります」という通知が表示されました。
ふと目に飛び込んできたのは、既婚者専用のマッチングアプリのアイコンでした。そしてその日を境に、夫の行動は明らかに変わりました。以前は無造作に放り出していたスマホを、片時も離さず浴室にまで持ち込むようになったのです。
さらにAさんを追い詰めたのは、夫の「不自然な優しさ」でした。アプリを見つけた数日後、夫は何でもない日に高級なスイーツを買って帰り、「いつも感謝しているよ」と笑顔でAさんに告げたのです。
白々しい夫の態度に、「この幸せはすべて偽物だったの?」とAさんは疑いを隠せません。真実を問い詰めたい衝動と、今の生活が壊れる恐怖の間で悶々としてしまいます。
夫がアプリに手を出した事実を知ったAさんは、どのように向き合えばいいのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。
■夫がアプリに手を出す「モテたい」心理
ー夫が家庭がありながらアプリに手を出すのはなぜなのでしょうか?
男性の中には、1人の女性に深く愛されたいという欲求よりも、多くの女性からチヤホヤされたい、モテたいという本能的な欲求が強いタイプがいます。結婚しているかどうかに関わらず「自分はまだ異性として魅力があるのか」を試したくなるのでしょう。
最近は広告でも既婚者向けアプリが頻繁に表示されます。キャバクラに通うような感覚で、暇つぶしや好奇心から「ポチッ」と手を出してしまう。奥様を傷つけている自覚すらなく、妄想の中で楽しんでいるだけのケースも実は少なくありません。
ーアプリ利用は即「浮気」や「離婚」と判断してもいいのでしょうか?
アプリを使っているという事実だけで、即座に不貞行為や離婚の意思があると判断するのは早計です。法的には肉体関係の有無が焦点になりますが、女性は「心が他へ向いた」時点で裏切りと感じてしまう傾向が強いのも理解できます。
まずは夫の様子をよく観察してみてください。スマホを手放さなくなったり、画面を見てニヤニヤしたりしていませんか。アプリの登録は、あくまで「目先の快楽」を求めている段階かもしれません。ここですぐにジャッジを下さず、冷静に状況を見極めることが大切です。
ー感情的にならずに夫の本音を引き出すにはどうしたらいいでしょうか?
いきなり「アプリを見たわよ!」と怒鳴り込むのは逆効果です。プライバシーの侵害だと逆切れされ、話し合いの門戸を閉ざされてしまう恐れがあります。
おすすめなのは、ジャブを打つようなアプローチです。「最近スマホを見てニヤニヤしているけど、何かいいことでもあったの?」と、私はあなたの変化に気づいているわよ、というサインを少しずつ送るのです。後ろめたさがある夫なら、それだけで釘を刺されたと感じ、利用を控えるようになることもあります。
ー再び良好な夫婦に戻るための第一歩は?
もっともやってはいけないのが「あんたがするなら私もするわ」という復讐です。これは関係を悪化させる一方で、自分自身の価値も下げてしまいます。
向き合うべき矢印を、夫から「自分自身」に変えてみてください。私は夫とどんな家庭を築きたいのか。夫への依存を断ち切り、自立した魅力的な女性であり続ける努力をすることです。
そして、日々の小さなことに「ありがとう」と感謝を伝えてみてください。自分がしてほしいことを、まず自分から相手にすること。それが、対等な関係を取り戻すための建設的な近道となります。
◆木下雅子(きのした・まさこ) 行政書士、心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























