会社を辞めてもいいと家族は言ってくれるけれど…
会社を辞めてもいいと家族は言ってくれるけれど…

経済的自立と早期を意味する「FIRE」というライフスタイル、実は色々な考え方があります。投資収益だけで全て賄う完全型ではなく、副業やパートなど少額の労働収入や安定した社会保障が受けられる最低限の労働と組み合わせる「サイドFIRE」「バリスタFIRE」と呼ばれるスタイルがあるのをご存じですか?

完全に仕事から脱出する「フルFIRE」をあえて選ばない方、現役期間をできるだけフルタイムで働く予定だったのに早期退職した方、それぞれの選択の理由を伺ってきました。

■FIREしようと思えばできるけど…しない理由は?

Aさん(関東在住、50代、会社員)は30年前からコツコツと続けてきた投資信託や持ち株の配当で、これまでの生活スタイルを変えない範囲であればすぐに会社を辞めても生活できるだけの資産をお持ちです。すでに亡くなったご両親からも家屋等の相続があり、65歳以上になればある程度の年金が発生することも安心材料です。

実際、専業主婦の奥様からも、すでに大学を卒業した一人娘であるお嬢様からも「会社を辞めて好きなことをするならそれもアリだと思うよ」と背中を押してもらえているという、大変幸せな状況にいらっしゃいます。

それでも会社員としての仕事を辞めない理由については「健康・交流・世間体」を考えてとのことでした。

「新入社員からずっと同じ会社で、休日のゴルフも飲み仲間も会社の先輩や同僚と一緒です。会社にいる限りは毎年強制的に企業健康診断も受けられますし、娘が結婚する時も何の肩書もない、名刺も持っていない無職ですと自己紹介せずに済みます。そういうことを考えると、とてもFIREなんてする気になれないですね。あくまで老後の資金と思っています」

実はものすごくうらやましいパターンでは!?

■できるだけ長く仕事を続けたかったけど…やめた理由は? 

Bさん(関西在住、60代、アルバイト)が数年前に退職した会社は、60歳で定年、その後70歳まで再雇用制度が導入されています。Bさんは長年営業として重要顧客の担当や部署の統括をしてきたこともあり、再雇用制度が導入されたときは、定年後も引き続き力を入れたいと考えていました。

自分よりも社歴の長い先輩が実際に定年を迎え、雇用条件を提示された際にその内容を知ったBさんは驚きました。「役職がなくなるから、役職手当はなくなるのだろうな」とぼんやりイメージしていた給料は、基本給も含めて減額され、定年前のなんと6割減。

「前と同じ仕事で、給料半分以下の元上司の愚痴をよく聞きました。特に、ここ数年世代交代が急激に進んで、30代の若手管理職が一気に増えました。そのメンバーともうまくコミュニケーションが取れずにいるのを見ているのが辛かったです」

結局Bさんは先輩の契約終了とともに、自分自身も60歳の定年で退職することを選びました。

「幸い、iDeCoとNISA両方、コツコツやってきた成果が出ていたので、どうせ給料が下がるならもっと気楽なアルバイトの方がいい、と割り切ることができました」

どう決断するのでも、お金の力は大きな安心材料ですね…!

■70歳までの就業機会措置実施済みの企業は34.8%

2026年現在の「高年齢者雇用安定法」では、65歳までの安定した雇用の確保を求めて企業に定年の引き上げや廃止、継続雇用制度の導入などを求めています。

人手不足解消と生涯現役社会の実現に向け、さらにこれらの措置の年齢引き上げが要請される可能性は少なくありません。

2025年12月に発表された「高年齢者雇用状況等報告」によると、すでに70歳までの就業機会措置実施済みの企業は34.8%と3割を超え、この数字は今後ますます増加する見込みです。

何歳でリタイアすることなるのか、現在40代~50代の方はますます選択肢が拡がり、悩む機会も増えるかもしれません。

【参考】
▽厚生労働省-令和7年「高年齢者雇用状況等報告」

◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。