元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖
元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖

夜のお店のサービス提供とは、主に接客をすること。接客といえど来店したお客さんの応対をするだけではなく、相手が何を求めているかを察しながら会話を続けるのがこの業界における“サービス”です。

ただ、歓楽街ではサービス提供の全てを善意と勘違いし、暴走するお客さんが絶えません。「この子は俺に気があるから、あんなことやこんなこと言ってくれるのか!」と思い込めば最後。自分を信じて疑わないと“痛客”となり、最終的に歯止めがきかないモンスターと化します。

つい最近ストーカー客を生み出してしまった私の友人であるU子は、とあるエリアで働くキャバクラやラウンジなどのいわゆる飲み屋のキャスト。暴走する男性客に振り回され、お店をやめるか悩むくらいに苦しんだのですが、とあることがきっかけで痛客撃退に成功しました。

■指名客がストーカー行為へ至った理由

U子の話によると男性・Aさんは仕事の接待で彼女の店を利用するようになり、徐々にハマっていったようです。最初はとても印象が良かったそうですが、紳士的な振る舞いはあくまで最初だけ。時間の経過とともに本性を現し、来店頻度が上がっていきました。

「接待で来た時はおとなしいし、優しくて飲み方がキレイなんだけど、あくまでそれは“仕事の顔”だったからだね。私のことを気に入ってくれて1人で来店するようになってからは、もう痛々しい言動連発。他の女の子とは喋りたくないし、私が別の席に行くとかんかんに怒るワケ。ボーイにも当たり散らすから、他のお客さんが見ててビックリしちゃって」とU子は語っています。

接待での利用と、プライベートの利用で見せる顔が全く異なるAさん。あまりのギャップに他のキャストが怖がり、ヘルプに着きたくないとの声が次々と挙がってしまうのでした。さらにAさんはLINEや電話もしつこく、アフターや店外の誘いなども強引。お金はそこそこ落としますが、U子とキャストのストレスなども相まって、ボーイも要注意人物としてマークし始めました。

しかし勢いはさらにヒートアップし、偶然を装って彼女の退勤間際に店の外をうろつくなど、明らかな待ち伏せ行為が増えていきます。これについてU子は「もうね、待ち伏せって分かるくらいわざとらしいの!うちの店の近くコンビニが近いんだけど、私がそこ寄るといつもいるっていう」と話していました。

強引なアフター・店外要求やキャストに対する横柄な態度、待ち伏せ……。店のルールを複数破ったことで、Aさんは見事に出禁処分となります。しかし、これでいつもの日々が再び訪れるかと思いきや、ストーカー行為が止まることはありませんでした。

■ストーカー客を意外な方法で撃退した

送迎の車の駐車場までをも特定され、帰り道を追いかけられたU子。Aさんの凄まじい執念は聞いているだけで恐ろしく、そこまでして彼女を追い詰める思考が私には理解できません。すっかり周りが見えなくなったAさんは出禁なのにも関わらず、堂々と来店し、「店に入れろ」と店長に直談判し、相当な騒ぎとなってしまいました。

U子曰く「警察にはストーカー問題で相談してたけど、なかなかこれだけじゃ対応してもらえないのよ。ストレスがデカすぎて出勤するのも憂鬱になり、店をやめようか悩んでたら、アフター先で違う店舗のボーイと知り合ってね。愚痴ってたら“Aさんのことを知ってますよ”って言われたの!」とのことです。

どうやら例の痛客は、隣町の別店舗でも似たような振る舞いをして、いくつかの店舗を出禁になった危険人物でした。新たなお気に入りを見つけては出禁を繰り返し、その付近の飲み屋はほぼ入店禁止とのことでした。きっとU子のもとに流れてきたのも、すでに一部のエリアで行き場を失っていたからでしょう。

愚痴を聞いてくれたボーイは、偶然にも彼女が働くお店の店長の知り合いでした。後日、仲間を引き連れてお店に遊びに来てくれたのですが、そこにタイミング良く(?)Aさんが襲来。店内が一気にザワつきます。

ボーイさんの身内が口々に「あれ、例の出禁客でしょ?」とAさんに視線を集中させた途端、なんと彼はすんなり引き下がりました。しかも、とても引きつった表情で……。

この出来事についてU子は「“出禁を解除しろ!”ってまた言いにきたんだけど、ボーイさんとその仲間の顔を見たらめちゃくちゃ気まずそうにして、逃げるようにして帰ったの。実は、それ以来きてないのよ。LINEもピタッと止まってさ」と語っています。

話によると、Aさんは隣町で想像以上に“やらかしていた”とのこと。「きっと他の街では自分の噂が流れているまい」と油断していたのだと思います。気が緩んだところに過去に出禁を喰らったお店のボーイや、評判を知る人が現れたら、動揺するのもまぁ頷けますね。

思いもよらぬ方法でストーカー客を撃退できた彼女。平和な日々が再び戻ってきたものの、痛客は相当反省しない限り、人を困らせる言動を繰り返しがち。Aさんがまた別の街に移り、他のキャストに迷惑をかけていないことを祈るばかりです。

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。