髭さんが言う同意の言葉は「いいね」(B.B軍曹さん提供)
髭さんが言う同意の言葉は「いいね」(B.B軍曹さん提供)

人と会話していると、ほんの少し言い方が違うだけで、受ける印象がまったく変わってしまうことがあります。印象が悪くなることもあるけれど、逆に好印象となる言葉の使い方も存在していることが、B.B軍曹さんの作品『一文字変えるだけで人に好かれる話』で描かれています。

B.B軍曹さんが気づいたのは「いいよ」と「いいね」という、わずか一文字違いの言葉。彼女の過去の恋人たちは何かに誘うと、決まって「いいよ」と返事をしていました。決して悪い言葉ではないけれど、この言葉にB.B軍曹さんは「自分に同意してくれているけれど喜んではくれていないのでは」とモヤモヤした気持ちを抱えていました。

時を経て、結婚したB.B軍曹さんが夫・髭さんに「温泉に行きたいな」と声をかけたときのこと。返ってきた答えは「いいね、俺も行きたい」でした。その瞬間、B.Bさんは「いいよ」とはまったく違う温かさを感じたのです。

読者からは「いいねって言ってもらえると、仲間みぃつけた!って思えます」「わたしも気をつけて使ってみます」など共感の声があがっています。そこで同作について、作者のB.B軍曹さんに詳しく話を聞きました。

■ほんの一文字の違いで変わる「距離感」や「関係性」

ー「いいよ」と「いいね」の違いに気づいたのはいつ頃でしたか?

昔の恋人から『いいよ』と返されたときに、なんとも言えない距離を感じたのが最初です。『許可された』というニュアンスが強くて、心が置き去りになったような感覚でした。でも髭から『いいね』と言われたときは全然違っていて、『あなたの選択そのものに共感してるよ』と受け止めてもらえた気がして、本当に嬉しかったんです。その瞬間に『言葉って一文字でこんなに気持ちが変わるんだ』と実感しました。

ーたった一文字で印象が変わるのはなぜでしょうか?

『いいよ』にはどうしても承認や許可のニュアンスが入ってしまうんだと思います。少し上から渡すような響きがありますよね。一方で『いいね』は横に並んで一緒に頷いているような感じがする。だから相手は『自分の気持ちに寄り添ってもらえた』と感じやすいんです。ほんの一文字の違いですが、伝わるのは距離感や関係性そのものだからこそ、印象が大きく変わるんだと思います。

ー今はご自身でも「いいね」と言うように?

はい、特に身近な人との会話では『いいね』を選ぶようにしています。自分が言われてうれしかったからこそ、相手にもその温かさを届けたいんです。ちょっとした相づちでも、『受け入れる』から『共感する』に変えるだけで空気がやわらかくなる。人との関係は、そういう小さな積み重ねで心地よく育っていくんだなと思います。

(海川 まこと/漫画収集家)