役場庁舎から見る立山連峰(画像提供:舟橋村役場)
役場庁舎から見る立山連峰(画像提供:舟橋村役場)

面積は、東京ディズニーランドの約7個分に相当する約3.47平方キロメートル。人口は3325人(2025年9月1日現在)。これが日本一小さい村、富山県中新川郡舟橋村(以下、舟橋村)である。

1970年頃から人口減少が進み、1980年には出生数わずか8人という危機的な状況にあった。ところが、平成に入ると人口は倍増し、一時は15歳未満の年少人口の割合で日本一を記録するまでに回復した。

■絶滅の危機を乗り越えた村の決断

雄大な立山連峰を望む舟橋村を上空から見ると、田畑が広がる農業地帯であることが分かる。都会の喧騒とはかけ離れて、時間がゆったり流れているように見える。

舟橋村の全域が市街化調整区域に指定され、開発が厳しく制限されたのは1970年のこと。自分の土地なのに、農地転用ができないため家を建てることができなくなった。この影響で人口の伸びが停滞し、出生数も1980年には8人にまで減少した。

「このままだと、村が存続できなくなる」

危機感を募らせた当時の村長(故人)は私財を投じて上京し、所管する省庁を訪ねたり、国会議員への陳情を重ねたりするなど、開発区域の指定解除に向けて奔走した。そんな努力が実を結び、1988年に富山高岡広域都市計画区域から外れ、立山都市計画区域に編入されたことで市街化調整区域から除外され開発が可能となった。 

その結果、富山市内でアパート暮らしをしていた子育て世代が、子どもの成長に合わせて村内に戸建て住宅を新築するケースが増えて村の人口が増加し、年少人口の割合も上昇していったのである。

「そもそも村自体が小さいため、保育所や小中学校が徒歩圏内にあります。そんな恵まれた子育て環境も、人口増加の大きな要因と考えられています」と舟橋村役場の担当者は話す。

■「3325人の大家族」が紡ぐコミュニティ

舟橋村の人口は、今年9月1日現在で3325人。村民同士の強い絆は、さながら大家族のようだという。

「村内には12の自治会があり、ほとんどの住民が加入しています。そのため、近隣住民との関わりが非常に深いのが特徴です」

祭事などで顔を合わせる機会も多く、日頃から顔の見える関係が築かれている 。そのため、災害時にはお互いの安否確認や助け合いがスムーズに行われるという 。

だが、一方で、こんな懸念もある。

「近年は価値観の変化により、コミュニティの希薄化が徐々に進んでいることも、村の課題となっています」

こうした現状に危機感を抱き、地方創生や関係人口の増加を目的に、住民がヒマワリを育てる「サンフラワープロジェクト」、公園をまんなかにいろんな縁をむすぶことを目指す「園むすびプロジェクト」など、住民の親睦を図る取り組みが進められている。

■将来の課題と持続可能な村づくり

村の面積が狭いことを逆手に取って、村では「日本一」という肩書きを村の紹介に活用している。特に「ディズニーランド7個分」という表現は、村の大きさをわかりやすく伝える手段として定着しているようだ。

人口は微増傾向にあるが、2040年頃には減少に転じると予測されている。

「これからの村の将来像として舟橋村が掲げるのは、『こどもたちを皆で育てる、子育て共助の村』であり『関係人口3万人の村』です。村全体で子どもを育てていく共助の精神を核に、多様な人々とのつながりを生み出すことで持続可能な村づくりを目指しています」

小さな村ならではの密なコミュニティと、子どもを村全体で育む風土に憧れて移住する人が増えてほしいと思う。舟橋村は「小さい」を強みに変えて、次の世代へ続く暮らしを築こうとしている。