刺繍が施される前のユニクロの白シャツ/Saika Shomaさん(@shomasaikashishu)提供
刺繍が施される前のユニクロの白シャツ/Saika Shomaさん(@shomasaikashishu)提供

ユニクロの白シャツが、25歳の男性の手によって刺繍がほどこされ、唯一無二のアート作品に生まれ変わりました。仕事終わりに少しずつ針を進め、3週間かけて完成させたその大作には、大きく羽ばたく蝶と「Papillon(パピヨン=フランス語で「蝶」の意味)」の文字が鮮やかにあしらわれています。TikTokに投稿されると、「高級シャツに変身しちゃった!」「素敵です!欲しい!!」と反響が広がりました。投稿主は、横振り刺繍ミシンを使って作品を制作している25歳のアーティスト・Saika Shomaさん(@shomasaikashishu)です。

刺繍を始めたきっかけは「ユニクロに刺繍映えしそうなシャツがあったから」。モチーフは散歩中に見かけた黒い蝶だといいます。

蝶の配置やデザインは作業を進めながらイメージを膨らませて形にしていったといいます。「基本的に同じ作業が続くのが大変でした。その中でも蝶は一つ一つ見え方や表現が変わるので、丁寧に縫うことを考えて集中を切らさないことが難しかった」と振り返ります。

制作には「3週間近くかかった」と言います。実際の作業は「基本的には仕事終わりに会社にある使われてないミシンで作業していたので、時間は19時~21時ごろまでになります」とのこと。限られた時間を積み重ね、完成へと近づけていきました。

完成の瞬間については「達成感がありました。やっと終わったという安心感と、綺麗に縫えているか不安もありました」と語ります。

中でも特に気に入っているのは背中のロゴ。「最後にロゴを入れるか迷ったのですが、“男性も女性も着られる服”と考えた時にロゴが入ると着やすくなったと思い、気に入っています」と話しました。

作品をTikTokで公開した理由については、特別なミシンの存在がありました。

「僕が使用しているミシンは横振り刺繍ミシンといって、昔はアメリカ軍の軍服に日本人が名前を入れるのに使われていました。今は桐生や横須賀のスカジャンくらいでしか残っていません。この技術を知ってほしい、興味を持ってほしいと思い、若い層に届くTikTokを始めました」

今回の蝶の作品も、その活動の一環だといいます。

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Saika Shomaさんが刺繍を始めたのは学生時代。「大阪文化服装学院で学んでいた時に2次加工に興味を持ち、そこで手刺繍に出会いました。地道な作業に惹かれましたし、作品に気持ちを込められることも魅力でした」

在学中にOBのもとでインターンを経験。その後刺繍会社に就職し、使われなくなっていた横振りミシンを修理して独学で技術を磨いたといいます。現在はそのミシンを使い、服や絵など様々な作品を制作しています。

今後については「デニムスカジャンという物を作成したいと思っています。サテン生地が多く和の印象が強いスカジャンを、デニムにしてアメリカントラディショナルのような柄で作りたい」と構想を語ります。さらに「横振り刺繍ミシンは2度と同じ表現ができないので、世界に1着を作り続けたい。それと刺繍ライブなどパフォーマンスもしていきたい」と展望を話しました。