野菜の生産に欠かせないタネの安定供給が将来、脅かされる可能性がある。円安や輸送費高で価格が上がっているうえ、生産地の天候不順で品質も安定しない。日本は調達する野菜種子の9割を輸入に頼る。パンデミックや紛争で輸送が途絶えれば、見かけ上高い自給率を誇る野菜の供給網が足をすくわれかねない。食料安全保障の点で検討すべき課題だ。

 長野県南佐久郡でレタスなど葉物野菜を育てている「のらくら農場」。例年春前にレタスの種まきを始めるが、今年は入荷予定の2月になってもタネが届かなかった。生産地の天候不順で種苗会社からの出荷が遅れているという。届くのは4月になると告げられた。

 レタスは暑さに弱く、夏を迎える前に収穫を終える必要がある。種まきが遅れれば野菜の出荷がずれ込むだけでなく、深刻な生育不良につながりかねない。同農場の萩原紀行氏は「今年は近隣の農家にタネを分けてもらったり去年の残りをかき集めたりして間に合わせたが、これが続くと農業を続けられなくなる」と危機感を募らせる。