ヤマモトマサアキ・画
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  第三章 行き違う人々(六十)

 穴山信君の領地は、甲斐南部の身延山から湯之奥金山にかけてのかわうち一帯で、膨大な金の産出地である。さらにはその金を運ぶ甲州往還も、領内から駿河の海まで続いている。この男の治める封土は、武田家の領国内では、信玄の住む甲府盆地に次ぐ重要拠点であった。